第83回日本公衆衛生学会学術集会、第81回全国保健所長会総会、都道府県等会長会議、に参加したメモ
<期間>
令和6年10月28日(月)~10月31日(木)
<場所>
北海道立道民活動センター かでる2.7
札幌コンベンションセンター
札幌市産業振興センター
【10/28:第81回全国保健所長会総会】
<厚労省>
・健康日本21:S53からずっとやってきた、今後もPDCA回していく
・DHEAT:発災後すぐに数日間だけ行く「DHEAT先遣隊」を作るつもり。厚労省の中で決裁がおりたばかり。
【10/28:都道府県等会長会議】
<藤田会長>
・都道府県からの要望書を出してください。
・立ち入り検査の技術継承のための研修を、科学院がやってくれるようになりました。
またブロックごとのDHEATの研修、お金がないから参加できない自治体が多かったが、予算をつけてくれるようになった。
・市型保健所の人も、奨励賞等への推薦をしてほしい。
<会場からの意見>
・奨励賞→公衆衛生学会学会誌に何か載せた人を推薦してほしい→そのためにも投稿してほしい。
・保健所に来るアンケート→所長会からのアンケートは、所長は極力答えてほしい。いまはインターンプログラムのアンケート募集中。各保健所長会長がリマインドすると回答率が上がる。
【10/28::研究事業報告】
・発表報告
(1)災害時健康危機管理活動の支援・受援体制整備と実践者養成事業
分担事業者:西田 敏秀(宮崎県延岡保健所兼高千穂保健所)
(2)院内感染対策ネットワークと保健所の連携推進事業
分担事業者:豊田 誠(高知市保健所)
・会員協議
◇討論会:テーマ「『DHEAT の役割と今後の展望』~能登半島地震におけるDHEAT 活動を振り返り 今後の展望を協議する~」
講演1「DHEAT による市町支援に関する課題と今後の展望」
演者:服部 希世子(熊本県有明保健所)
講演2「DHEAT による本庁支援に関する課題と今後の展望」
演 者:石井 安彦(北海道釧路保健所)
講演3「被災保健所におけるDHEAT 受援に関する課題と今後の展望」
演 者:後藤 善則(石川県能登北部保健所)
講演4「広域災害対応におけるDHEAT 事務局の役割」
演 者:高岡 誠子(日本公衆衛生協会 DHEAT 事務局)
<所感>
・DHEATの派遣調整は、被災自治体から厚労省に要請が入ったのち、日本公衆衛生協会 DHEAT 事務局が実質的なシフト組を行っているが、ここにブレイン機能はない。
・首都直下地震で厚労省や公衆衛生協会が機能不全に陥った場合、DHEAT調整をどうするか、は、まだ決まっていない。DMATのように自動的に動ける仕組みが必要。また厚労省の中でDHEATがどう扱われているのか見えないのも課題。
・DMATとDHEATの関係性は、支援先の自治体がDMATをどのように組織に位置づけるかによって変わるものだろう。
・「本庁」にも色々とカラーがある(政治色が出る)。入りにくい本庁もある。たぶん本庁はどこも外部の人が入ってくることに慣れていない。これは本庁でも受け入れ支援の訓練が必要ということ。
【10月29日】
<特別企画:パネルディスカッション(第76回北海道公衆衛生学会共催企画)人口減少時代の健康なまちづくり>
2024年10月29日(火) 10:00 〜 11:10 第1会場 (札幌コンベンションセンター 特別会議場)
モデレーター:玉腰 暁子(北海道大学大学院医学研究院公衆衛生学教室)
パネリスト:秋元 克広(札幌市長)
・大雪が降るのに197万人も住んでいるのは世界でも札幌だけ
・でも2020年から2060年までに38万人減少する見込み。
・20代の転出超過
パネリスト:黒川 豊(大樹町長)
・人口5千人、農業、漁業、酪農。ウシ25000頭、チーズになる。
・宇宙もやっている、太平洋側で雪が少ないから。
・外国人労働者が増えた:エアコン、水洗、wifiがあると来てくれる。
パネリスト:松野 哲(岩見沢市長)
・人口7万人、豪雪地帯、農業
・農家は1200→700代に減少、農地は引き継がれ、1つの農家の拡大化が進んでいる。
・大規模化の一方だから、スマート農業、GPS、コンピューターで機械化。
<所感>
人口が減る北海道で、環境は厳しいはずなのに、3人に悲壮感がなかった。首長としての宣伝もあるだろうが、「明るくやっていく」という姿勢も大事なのだろう。
<学会長講演:これからの社会と公衆衛生>
2024年10月29日(火) 11:20 〜 11:50 第1会場 (札幌コンベンションセンター 特別会議場)
座長:尾島 俊之(浜松医科大学健康社会医学講座)
演者:玉腰 暁子( 北海道大学大学院医学研究院公衆衛生学教室)
・日本は2008年から人口減、2070年には8700万人。
<所感>
非常に総花的な話ばかり・・・。「日本の平均値」について、いくら話を聞いても、平均値に合わせた対応をしているところなんて、ほとんどないのに、平均値から見える今後に必要な政策や提言を聞いても、どこの地域の話?と疑問に思う。
<ランチョンセミナー3 Well-being最大化とSocial Capital醸成の源泉「自律性」「寛容性」の向上策 ―内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で挑む「包摂的コミュニティ再生プロジェクト」>
共催:国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
2024年10月29日(火) 12:00 〜 13:00 第3会場 (札幌コンベンションセンター 大ホールC)
座長:久野 譜也(内閣府SIPプログラムディレクター/筑波大学大学院人間総合科学学術院/筑波大学スマートウエルネスシティ政策開発研究センター)
[LS-3-1] 「住宅団地におけるコミュニティ再生・形成を実現する社会技術」
*神田 昌幸1 (1. 大和ハウス工業株式会社執行役員リブネスタウン事業)
・「団地」や「タウン」をそのままにしておくと、単に高齢化しておわってしまう。新しく入る人が必要。
・自治会が難しい、きちんと組織する必要がある。
[LS-3-2] LGBTQをはじめとする多様性への理解増進のための社会技術
*清家 理1 (1. 立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科)
・「LGBTについて国費で研究していること」をよく思わない人もいる。そういった苦情が来る。
<所感>
マジか?!びっくり。
[LS-3-3] 世界1位の若年女性のやせ者率の改善法:痩せたい気持ちを過剰に作り出す社会とコミュニティ
*田村 好史1 (1. 順天堂大学国際教養学部国際教養学科)
・そもそも親が「太ったね」と指摘しまう、友達は「やせたね」と誉め言葉を言う。
・「やせ」が問題であることを広めることが難しい、それを端的に言い表せる言葉が必要。
[LS-3-4] 伴走型子育てママ支援の新たな提案
*塚尾 昌子1 (1. つくばウエルネスリサーチ)
・7割の母親が「自分の時間がまったくない」という現実。
<所感>
いままで久野先生の研究はあまり興味がなかったが、今回の登壇者はみなさんとても面白かった。
特に「今後の一番の壁は何か、何が困難か」とパネラーに聞いていた点がよかった。
次回はぜひ「失敗談」や「上手くいかなかったこと」を聞いてみたい。
<教育講演2:医療情報の壁・分断は超えられるか ~医療デマ・HPVワクチンの情報空間から考える~>
2024年10月29日(火) 15:30 〜 16:30
*藤松 翔太郎1 (1. NHK首都圏局コンテンツセンター)>
・コロナワクチン:両論併記で出すとネガティブな印象が残りやすい。ネガティブな情報は、前後にファクトをサンドイッチするように心がけるようになった。
なぜ手弁当で純粋に広報活動だけしている団体が批判されなければならないのか、と思った。
→こっちからすれば、なぜそんな手弁当で勝手にやっている人が「扇動」するのか、と思っていた。
・HPVワクチン:「放送したほうがいい」という声は社内で1人だけあった。
<シンポジウム5:被災自治体職員というインフラ>
2024年10月29日(火) 16:40 〜 18:15
[S-5-1] 熊本県における災害時の自治体職員向け産業保健活動
*劔 陽子1 (1. 熊本県阿蘇保健所)
・被災自治体には嘱託産業医しかいない、という場合が多い。管内の産業保健を保健所ががんばらないと、被災自治体の職員も倒れてしまう、という状況だった。
・たまたま自分が産業医大卒で卒業生ネットワークを使って活動に結びつけたが、そういう状況がなくても支援できる体制が必要。
[S-5-2] 災害対応に当たる支援者や行政職員を守る情報システムの社会実装と可能性
*人見 嘉哲1 (1. 北海道健康福祉部)
・J-SPEEDの入力フォーマットを使うことができたのでスマホを使ってアンケートを作った。
・課題:災害時の被災自治体職員の健康を守るのは誰?
・課題:「休めと言われるのが分かっているので入力をやめた。休むと現場が回らなくなる」
[S-5-3] データに基づく健康危機管理を実現するJ-SPEEDの開発経緯
*久保 達彦1 (1. 広島大学 大学院医系科学研究科 公衆衛生学)
・「保健福祉サービスの継続」が目的なはず。でも「住民優先」になってしまい、自治体職員はなかなか休みにくい。
・なにより受援自治体が受け入れる(DHEAT、J-SPEED、DOHATを)かどうか。総務?保健福祉部門?そもそも人が足りないのに。
[S-5-4] 令和6年能登半島地震の災害産業保健支援チーム(DOHAT)の活動
*五十嵐 侑1 (1. 産業医科大学)
指定発言:立石(産業医大)
・自治体は「平時の職員を守る体制」が弱い。民間であれば当たり前のことが、まだできていない。
<自由集会3 公的職場の担い手をまもるためにー産業医・産業保健職ネットワーク>
2024年10月29日(火) 18:20 〜 19:50 第10会場 (札幌市産業振興センター セミナールームB)
・産業保健師、統括産業医
・自分の部署の産業医を担当できないことが法律で決められた→振興局から保健所を切り離した自治体もある。
【10月30日】
シンポジウム37:公衆衛生の緊急事態におけるリスクコミュニケーション教育の動向
2024年10月30日(水) 09:00 〜 10:35 第7会場 (札幌コンベンションセンター 204)
[S-37-1] 京都大学公衆衛生大学院におけるリスクコミュニケーション教育の紹介
*中山 健夫1 (1. 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)
・健康危機管理やリスコミは、これからの医学教育に必須だが、教える側もまだ知識がない状態で、しっかり勉強していかなければならない。
[S-37-2] 内閣感染症危機管理統括庁におけるリスクコミュニケーションに関する取組
*蝦名 玲子1,2 (1. 京都大学大学院医学研究科健康情報学分野、2. 株式会社グローバルヘルスコミュニケーションズ)
・「感染症危機におけるリスクコミュニケーションに関する研究」報告書:平時からリスコミの準備を。
[S-37-3] 国立感染症研究所の教育体制
*齋藤 智也1 (1. 国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター)
・危機に対応することが片手間だった→危機が起こると専門家を作る→危機が去ると専門家が活動する場がなくなる→片手間になる・・・という繰り返しだった。
<ランチョンセミナー4 誰一人、大腸がんで亡くならない世界へ>
共催:Boston Medical Sciences株式会社
2024年10月30日(水) 12:30 〜 13:30 第1会場 (札幌コンベンションセンター 特別会議場)
座長:三宅 基隆(国立がん研究センター中央病院 放射線診断科)
<所感>
予防、検査、診断、治療という話かと思いきや、ほとんどが大腸CTの宣伝だった。
<シンポジウム24:保健所等における健康危機管理のあり方>
2024年10月30日(水) 15:25 〜 17:00 第3会場 (札幌コンベンションセンター 大ホールC)
座長:尾島 俊之(浜松医科大学健康社会医学講座)、松本 珠実(大阪市健康局健康推進部)
[S-24-1] 地域健康危機管理ガイドライン改定案の作成に向けて
*小林 良清1、岡田 就将2、鈴木 陽3、豊田 誠4、山本 信太郎5 (1. 長野県佐久保健所、2. 東京医科歯科大学、3. 宮城県塩釜保健所、4. 高知市保健所、5. 福岡市中央保健所)
[S-24-2] 保健所等の人的資源の育成・連携
*石井 安彦1、小倉 憲一2、田中 英夫3、西垣 明子4、簗場 玲子5 (1. 北海道釧路保健所、2. 富山県厚生部、3. 寝屋川市保健所、4. 長野県健康福祉部、5. 石巻保健所登米支所)
[S-24-3] 保健所における新型コロナウイルス感染症対応の検証
*前田 秀雄1、調 恒明2、高山 義浩3、劒 陽子4、中島 一敏5 (1. 公益財団法人結核予防会、2. 山口県環境保健センター、3. 沖縄県立中部病院、4. 熊本県阿蘇保健所、5. 大東文化大学)
[S-24-4] 米国公衆衛生認証制度に関する文献的調査
*佐伯 圭吾1、吉見 逸郎2、松田 亮三3、白井 千香4、尾島 俊之5 (1. 奈良県立医科大学 疫学・予防医学講座、2. 国立感染症研究所、3. 立命館大学 産業社会学部、4. 枚方市保健所、5. 浜松医科大学 健康社会医学講座)
<所感>
「健康危機管理ではリスクコミュニケーションが大事だ」とよく言われるが、コロナではコミュニケーションの場が立ち上がらなかった。特にADBやNIIDが見ている景色と、保健所が見ている景色があまりに違いすぎて、地域の特性やリスクを分かっている保健所の意見が上位組織に反映されなかったし、声を届けられなかった。ADBやNIIDは感染症のことを考えていたが、保健所が相手にしていたのは感染症だけではないし、感染症が何より優先することでもない。上位組織は、もっと現場の声を拾うシステムを作る必要がある。
【10月31日】
<シンポジウム51:映画「終わりの見えない闘い」とパンデミックの記録を残すこと―新型コロナウイルス感染症アーカイブズの構築をめぐって>
2024年10月31日(木) 09:00 〜 10:35 第6会場 (札幌コンベンションセンター 小ホール)
座長:城所 敏英(公衆衛生保健所活動研究会、モニタリング委員会感染症等グループ)、飯島 渉(長崎大学熱帯医学研究所)
[S-51-1] 保健所のコロナ対応の現場を映像で記録して
*宮崎 信恵1 (1. ピース・クリエイト有限会社)
・当時の中野保健所長が映像で残すことに前向きだった。
[S-51-2] ナラティブな記憶と特別区保健所の記録について
*関 なおみ1 (1. 国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター(元 大田区保健所 感染症対策課))
・なにをどう残すか。「ホロコースト証言シリーズ」は秀逸。生き証人の価値。
[S-51-3] 札幌市保健所の新型コロナ対応の記録とその役割について
*山口 亮1 (1. 札幌市保健所)
[S-51-4] 経験者たちの知恵を後世に伝えるための、「虎の巻」の編纂とインタビューの録画
*横山 勝教1 (1. 香川県中讃保健所)
<所感>
保健所としては、コロナはまだ終わっていない。たとえば、あれだけ保健所が大変だと言われたのに、5類になる直前の2023年4月からすでに人を減らされているし、もともと人が不足していた部署にはいまだに人が配置されないままである。そしてコロナを知らない新人保健師は学生時代からのマスクを外せない。残っている職員は、まず職員同士で仲が悪くなって、同じ部署では働けなくなった。
高齢者施設や病院は以前のように面会できない。マスクが当たり前になったまま。
学校もマスクを外せない6年生がおり、いまだに診察を拒否する開業医がいる。
行政として記録を作っても、上っ面の記録しか書けないし、コロナで膨張したカスハラは近年ますますひどくなっている。
保健所は「戦地からの帰還兵」みたいな感じ。世間はすっかり戦争(コロナ)を忘れているが、帰還兵(保健所)は戦地での体験を忘れていない、そして世間が戦争(コロナ)を忘れていることにガッカリしている。
だから、帰還兵(保健所)として一番言いたいことは「もう二度と戦争にしないでください」ということ。
そして、記録に残すとか、過去の出来事を表に出していくことは、けっこう勇気がいる。そんな帰還兵としての教訓は、口をつぐむな、ということ、かな?と思う。
<シンポジウム46:子どものための公衆衛生>
2024年10月31日(木) 10:45 〜 12:20 第2会場 (札幌コンベンションセンター 大ホールB)
座長:中山 祥嗣(国立環境研究所環境リスク・健康領域)、田淵 貴大(東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
[S-46-1] 子どものからだと心クライシス
*野井 真吾1 (1. 日本体育大学)
・学校に行っている日本の子どもの健康状態は、「被虐待児」と同じ(アンケート結果から)。
・「大人が変わる」には、大人が「子ども」になること。今の大人は、子ども心を忘れている。
[S-46-2] 環境と子どもの健康と経済学
*中山 祥嗣1 (1. 国立環境研究所環境リスク・健康領域)
・日本人の平均身長が減少している→低出生体重児が増えたから?
・世界中でIQ値が低下している。
・自閉症診断の増加は確認されているが、増加の原因はほとんど特定されていない。
・ome=集合体
[S-46-3] GISによる社会環境要因スコアと子どもの健康との関連
*西浜 柚季子1、中山 祥嗣2 (1. 筑波大学医学医療系生命医科学域小児環境医学研究室、2. 国立環境研究所環境リスク・健康領域エコチル調査コアセンター)
[S-46-4] スクリーニングと公衆衛生学のブリッジング
*山野 則子1 (1. 大阪公立大学)
<所感>
大人が感度を高くしていくしかない。