こーいう訓練は、コロナ対応の焼き直しで、やってはいけない訓練です。
また職員が辞めるよ?
また職員が死ぬよ?
<このような訓練がダメな理由と、改善策>
ダメな一番の理由は、コロナ対応と同じことですが、意思決定の過程がまったく不明であること。どういう決め方で誰がどう話し合ったのかが分からないまま進んでしまう、ということです。
この訓練内容は、ほぼコロナでやった対応の焼き直しです。
たとえば、中核病院での搬送訓練もコロナ対応の初期と同じでした。NCGMや成田病院が、天然痘でも扱うような取り扱いでやってしまうと、日本中の病院がそのやり方に倣おうとします。そして、そのやり方でなければダメという思考で続けてしまうので、感染が拡がると対応不能になります、コロナでやったように。
でも、そのような完全防備の体制で患者の搬送や受診をやっていては、2人目、3人目、と患者が出るにつれて、あっという間に対応困難になります。このような訓練をしてしまうと、中核病院は、次の感染症でも同じ対応をするでしょう。そして患者が増えるにつれて、すぐ診られない状態になり、たとえば「遠方の病院」に受診調整するような結果になるでしょう。そして一般のクリニックでは「発熱患者」というだけで受診拒否される事態となり、「検査」ができないので保健所に行政検査の依頼が殺到するでしょう。受診調整もまた同じように行政がすることになるでしょう。
つまり「やりすぎ」です。NIIDの先生がどのように主導・指導されたか分かりませんが「感染症を100%防ぐ」という訓練をすると、すべてコロナの焼き直しになります。それよりも前に「この感染症には、どう対峙するか」という意思決定を、吟味する必要がありますが、意思決定や合意形成はすべて飛ばされてしまい「徹底的に抑え込む前提」で訓練が進んでしまいます。でも、「徹底的に抑え込む」ことが不可能であったことは、都道府県レベルでもコロナで経験済みのはずです。
1.同じ轍を踏まないために、まず「コロナの失敗例」を洗い出す。
2.何をどこまでやるか、合意形成をする訓練をする。
3.やみくもに感染症対策だけをするのではなく、どのように「あきらめていくか」を訓練で話し合っておく。
このようなことができると良いと思います。
<模擬記者会見の訓練内容がダメな理由と改善点>
「コロナの経験」を踏まえた記者会見をするのであれば、コロナの反省を生かす必要があります。まず「毎日の記者会見」は、職員の負担が非常に大きく、職員の対策に割くべき時間を削ぐことになり、必要な時間が削られてしまいます。コロナの経験から言うと、記者会見は必要最小限であるべきでした。また「学校の臨時休校」のような政府主導の政策は、意味がなかったどころか、医療スタッフの子らも学校を休むことになり、スタッフ不足に陥って医療を回すことができなくなり、実害が発生しました。さらに、この政策は感染症対策にとって無意味だったと結論付けられているはずです。そのような事情を踏まえて「コロナと同じことをしてはいけない」と、まず首相や知事にご理解いただく必要がありました。
また、ハンマー&ダンスは、疫学者の机上論であって、「ピークを抑えて発生を抑制する」という対策を強調するあまり、疑い患者までも忌避されて、医療崩壊が発生してしまいました。コロナに関係ない妊婦が受診できず、結果、死産になったというニュースもありました。つまり「ピークを抑えるように対策をすること」は、医療ニーズの律速を調整する役に立たなかったどころか、この対策のせいで医療をスムーズに供給できなくなった、そのことを首相や知事に理解してもらう必要があります。
記者からは「死者が出たらどうするんだ」というような恫喝のような質問も来ると思われます。そこで行政としては「100%防ぐことを第一に」というメッセージを発するのではなく「コロナのときも100%防ぐことは無理でした。そしてゼロコロナを目指して社会が動いたせいで、別疾患で受診すべき人までも受診できなかったり、医療資源を過剰に使ってしまったことがありました。そのようなパニックを二度と起こさないことが、いま必要な対策です。」くらいの言葉を、首相や知事から言ってもらう必要があります。コロナの感染症専門家は感染症のことしか見ていませんでしたが、行政の我々は「感染症のコントロールが何よりも優先されるもの」ではありません。そのメッセージを首相や知事に言ってもらう必要があると思います。
さらに、もし政府が主導で「感染症を完全に抑え込む」と言ってくるのであれば、その弊害を挙げて、都道府県知事を通して政府に要望する、というルートも想定しておきたいところです。「クラスター対策」といって無意味にクラスターを数えたり発表したりした結果、クラスターが起きた施設が潰れたり誹謗中傷にあったりして、何の対策にもならなかったことも忘れてはいけません。
<訓練全体を通しての改善点>
医療崩壊を防ぎ、トリアージ機能を維持するには、ごく一部の医療機関が感染症の特別な対応でみるのではなく、「地域全体で患者を診ていく」という話にしておかなければなりません(それが地域包括ケアです)。そうでなければ、コロナの焼き直しになるからです。医療提供を維持するには、タイベックや、搬送用アイソレーターは、頻繁には使えず、現実的ではないのです。コロナで経験したような、一部の人だけが対応する医療提供体制では、実際には回せません。
ですから、たとえば中核病院を「感染症対応で手いっぱいだから他の患者は診られません」という状況にさせてはいけないのです。また、地域の休日急病診療所にコロナ検査をさせて、”急病”のトリアージ機能を麻痺させてはいけないのです。
訓練は、やることが目的ではないので、もし調整がつかなければ、その年は訓練をスキップしてもいいと思います。
<今後、どのような訓練が必要か>
・感染症対策をやりすぎない医療機関向けの訓練
以上を踏まえると、まず「医療機関向けの訓練」が考えられます。それは、地域全体で患者を診ていく「感染症対策をやりすぎない訓練」です。タイベックは着ない、救急搬送はフツーに行う(N95は着用)、疑い患者が多くなった場合を想定して、保健所が受診調整に介入せず医療機関同士で連絡しあう、というような、感染症に対する”ハードルを下げる訓練”です。これがNIID監修のもとであれば、なお良いと思います。そもそも保健所には「受診調整」する能力はありません。救急隊員が保健所にいるワケでもなければ、患者が目の前にいるワケでもないのです。
・医療提供体制をスムーズに回し続けることを目標にする
本部訓練は、上記までに提案した通りですが、目標設定を、よく言われる「死亡率を下げる・感染症を抑える」ことから、「医療提供体制をスムーズに回し続ける」という目標に、シフトさせたほうがいいと思います。この目標であれば、医師会や病院長を対象にした医療機関連絡会議の訓練も想定できると思います。感染症対応のハードルが高いと、地域では医療提供体制を回せなくなるので「ハードルを低く維持しなければならない」という課題で会議を開くことが必要です。
・ご意見番的な先生の役割を明確にする
さらに、もし、DMATや医師会等の、ご意見番的な先生がいて、コロナのときにも活躍されたのであれば、NIID監修のもとでこの先生方への訓練や研修も良いと思います。医療提供体制をスムーズに回すためにご意見番的な先生が号令をかけるまでの訓練です(災害訓練でよくやるフェーズごとのようなイメージで)。
いずれにしても「コロナ対応の失敗」を繰り返さない対応ができるようにしたいと思っています。
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