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2026年8月4日火曜日

「結核に対する就業制限に関する実態調査へのご協力のお願い」に対する答え

とある媒体から、表題の通りの【調査協力のご依頼】が届いたので、私の回答を記録しておく。大事なアンケートではあるが、アンケート実施者の就業制限に関する認識に、一抹の不安を覚えている。そのため、記録しておく。

ちなみに、現行の就業制限の扱いの規定は以下の通り。
これ以上でもこれ以下でもなく、勝手に解釈をつけ足したり、変更したりして良いものではない。

<就業制限>根拠:感染症法18条、施行規則11条の2、3。逐条解説第4訂版p108-109
・対象業務:接客業その他多数の者に接触する業務。
・期間:その病原体を保有しなくなるまでの期間、またはその症状が消失するまでの期間。
・就業制限は、喀痰の、塗抹、培養、核酸増幅法のいずれかの結果が陽性であるすべての患者が対象となる。

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Q1.貴職が現在勤めている保健所の所属は次のうちどれですか?
都道府県

Q2.貴職が行政の仕事(保健所や県庁など)に就かれたのはいつですか?
令和元年(2019年)以前

Q3.貴職は保健所長として入院勧告をかけた結核患者に就業制限をかけたことがありますか?
5回(人)以上ある

Q4.入院勧告をかけた患者に、貴保健所が就業制限をかける手続き・タイミングは、次のどれが最も近いですか。
その他
「その他」について詳しくご記載ください
A:就業制限の通知に当てはまれば、入院勧告とほぼ同時に通知し、感染症診査会には文書で報告し、そこで「この患者には就業制限を通知しているが、よいか」とうかがって「承認」をしていただいている認識です。

Q5.症状・検査結果・接触状況などを踏まえ、貴職が就業制限の要否や期間の判断に迷ったケースは過去5年間で何回ありましたか?
0回

Q6.就業制限の適用や解除に関して、貴職が医療機関・高齢者施設等との調整が困難だと感じたケースは過去5年間で何回ありましたか?
0回

Q7.現行の就業制限の開始条件は、結核の感染性に関する科学的知見を反映していると感じますか?
あまりそう思わない

Q8.現行の就業制限の解除条件は、結核の感染性に関する科学的知見を反映していると感じますか?
あまりそう思わない

Q9.貴保健所が行う就業制限措置は、近隣地域・職域での感染拡大防止に有効だと思いますか?
あまりそう思わない
よろしければ、なぜそう思われるか詳しくご記載ください。(200字以内)
A:職業の選択は憲法で認められている国民の権利です。その就業を制限するのは「業によって感染させられる相手」の権利も等しく守るためです。ですから就業制限措置自体は悪くないのですが、こと「結核」に関しては、感染力が低く、感染拡大防止目的の入院もない国が多い中で、日本で就業だけ制限しても効果がないだろうと思います。せめて「退院させることができる基準」を満たしたら就業制限も解除、で良いと思います。

Q10.貴保健所が行う就業制限措置は、患者の権利(就労や退院後の行動や居場所の自由など)とのバランスが適切だと思いますか?
ある程度そう思う

Q11.現行の就業制限措置は、制度面で見直す必要があると思いますか?
ある程度そう思う
よろしければ、なぜそう思われるか詳しくご記載ください。(200字以内)
A:「退院させることができる基準」を満たして退院したら、患者は家族との生活に戻ります。家庭では特に感染対策をしていません。一方、接触者検診として「患者の退院後の接触」をもとに、家族に検診することはありません。さらに「患者の退院後に患者から感染させられた家族」は、まずいません。以上のことから、せめて「退院させることができる基準」を満たして退院したら、就業制限は解除でよいと思います。

Q12.就業制限措置は、感染拡大防止と患者の権利(就労や退院後の行動や居場所の自由など)と、どちらに重きを置くべきとお考えでしょうか?
分からない・どちらともいえない

Q13.貴職は、感染リスクの違いを踏まえ、対人接触が多い職種と少ない職種で就業制限の基準を変えるべきだと思いますか?
全くそう思わない→補足説明:「対人接触が多い職種と少ない職種」を規定することは、現実的に不可能であるし、解釈にバラつきが生じるリスクが非常に高く、「就業制限」そのものの意義を揺るがす安易な方法だと考える。

★補足★
以下の一連の「Q14」から見えるのは、このアンケート実施者は、「職種によって就業制限の要否を判断するべきだ」「感染性の高さもケースバイケースでバランスをとるべきだ」と考えていることである。これは、現行の就業制限の原則を理解していない、かつ、「ケースバイケースで保健所が勝手に判断してもいい」という勘違いをしている点において、非常に危うい認識をしていると言わざるを得ない。現行の就業制限は、「職種」で判断することにはなっていないし、「不特定多数に接する可能性があるなら、塗抹検査は陰性でも就業制限するべきだ」という基準は存在しない。伝染病予防法でもあるまいし。
だから、たとえば「Q14-8」の「スナックで接客業を営むチーママ」に対して、塗抹検査は陰性でも気管支鏡検査で陽性になったことをもって、就業制限をかけようものなら、それは明確に職業差別である。コロナで「夜の街」が攻撃されたことと同じことを、公衆衛生の本当の専門家たる保健所が行うことになる。そんな制度を作ってはならない。保健所だって間違える、それを前提としておかなければ、それこそ知らぬ間に自分たちも人権侵害に手を染めてしまう。

Q14-1.貴保健所では、入院勧告をかけた結核患者のうち、入院前の次の就業条件の患者に対して、就業制限をかけるか否かの原則について、どうお考えですか。
「1.原則かける、2.原則かけない、3.どちらとも言えない」の3択でお答えください。
高齢者施設に入所していた80歳,初診から入院中の喀痰の最大塗抹が1+.
A:原則かける

Q14-2.貴保健所では、入院勧告をかけた結核患者のうち、入院前の次の就業条件の患者に対して、就業制限をかけるか否かの原則について、どうお考えですか。
「1.原則かける、2.原則かけない、3.どちらとも言えない」の3択でお答えください。
自宅に50歳代の息子夫婦と同居していた無職の80歳,初診から入院中の喀痰の最大塗抹が1+.
A:原則かける

Q14-3.貴保健所では、入院勧告をかけた結核患者のうち、入院前の次の就業条件の患者に対して、就業制限をかけるか否かの原則について、どうお考えですか。
「1.原則かける、2.原則かけない、3.どちらとも言えない」の3択でお答えください。
IT関係のエンジニアで内勤と自宅通勤が主体の40歳,初診から入院中の喀痰の最大塗抹が1+.
A:原則かける

Q14-4.貴保健所では、入院勧告をかけた結核患者のうち、入院前の次の就業条件の患者に対して、就業制限をかけるか否かの原則について、どうお考えですか。
「1.原則かける、2.原則かけない、3.どちらとも言えない」の3択でお答えください。
アルバイトをしていない一人暮らしの20歳の大学生,初診から入院中の喀痰の最大塗抹が1+.
A:原則かける

Q14-5.貴保健所では、入院勧告をかけた結核患者のうち、入院前の次の就業条件の患者に対して、就業制限をかけるか否かの原則について、どうお考えですか。
「1.原則かける、2.原則かけない、3.どちらとも言えない」の3択でお答えください。
パートをしていない40歳の専業主婦で夫と10歳代の子ども二人と同居,初診から入院中の喀痰の最大塗抹が1+.
A:原則かける

Q14-6.貴保健所では、入院勧告をかけた結核患者のうち、入院前の次の就業条件の患者に対して、就業制限をかけるか否かの原則について、どうお考えですか。
「1.原則かける、2.原則かけない、3.どちらとも言えない」の3択でお答えください。
従業員10人で金属加工作業を行う工場で働く50歳,初診から入院中の喀痰の最大塗抹が1+.
A:原則かける

Q14-7.貴保健所では、入院勧告をかけた結核患者のうち、入院前の次の就業条件の患者に対して、就業制限をかけるか否かの原則について、どうお考えですか。
「1.原則かける、2.原則かけない、3.どちらとも言えない」の3択でお答えください。
従業員10人で金属加工作業を行う工場で働く50歳,喀痰塗抹が陰性で、気管支鏡検体を用いた塗抹検査が1+.
A:原則かけない

Q14-8.貴保健所では、入院勧告をかけた結核患者のうち、入院前の次の就業条件の患者に対して、就業制限をかけるか否かの原則について、どうお考えですか。
「1.原則かける、2.原則かけない、3.どちらとも言えない」の3択でお答えください。
スナックで接客業を営む35歳のチーママ,喀痰塗抹が陰性で、気管支鏡検体を用いた塗抹検査が1+.
A:原則かけない

Q15.最後に、感染症法18条が規定する就業制限の運用に関し、手続き面も含め、何かご意見がございましたら、以下に自由にお書きください(600字以内)。
A:就業制限は本来は全数通知です。「接客業その他多数の者に接触する業務」に従事しているかどうか保健所は判断せず「通知」するもの、と解されます(保健所が監視するワケではないから)。通知しておいて、それに当てはまるか、守るか、は、患者に任せられるものです。
厚労省は、疑義照会に対して、いままでこのように答えてきました。でも「令和7年度に〇〇〇が厚労省に『退院して施設に入所できるのに、就業制限があると施設が受け入れてくれない。これは患者の不利益になるので、就業制限をかけなくてもいいか』と問い合わせたところ、保健所が決めていいと言われた」と答えがあったとのことですね。厚労省も担当が変わると言うことが変わってしまうのが残念ですが、この答えは「そんなに言うなら好きにすれば(責任は保健所にあるからね)」という意味で、むしろ困ります。本来は、就業制限を曲解している施設の認識を改めるべきでした。就業制限の問題ではありません。
就業制限通知は、あくまで「通知」なので、本来は「通知したり、しなかったりする」ものではないと思います。なので懸念事項として「通知したり、しなかったりすると、保健所ごとの判断にばらつきが出て、それこそ公平性の観点から疑義が生じる」とお伝えしておきます。
就業制限のあり方は改善が必要ですが、「業の制限」と「業ではない」施設入所・デイサービス等の利用、は分けて考えるべきものです。

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