このブログを検索

2026年8月4日火曜日

第84回日本公衆衛生学会総会のメモ

2025年10月29日~10月30日で参加した第84回日本公衆衛生学会総会のメモ

【第84回日本公衆衛生学会総会】

◆シンポジウム9
10 月29 日(水) 9:30~11:00  第4 会場(1001-2)
多死社会に伴う公衆衛生上の課題と展望
座長:高杉  友(近畿大学)
   武藤  剛(北里大学)
演者:
・多死社会の公衆衛生上の課題と法整備:全国調査に基づく御遺体取扱い葬儀社ガイダンス案
武藤  剛(北里大学医学部衛生学)
棺桶のドライアイスによる二酸化炭素中毒に注意、意識消失、死亡にいたる。
・多死社会における検案の実際と法医学からの展望
猪口  剛(千葉大学大学院医学研究院附属法医学教育研究センター)
警察が扱う死体の解剖率は、北欧米では100%、日本では10%。法医学が公衆衛生に貢献できていない。
・葬儀社・安置室の室内環境の実態と基準のあり方
鍵  直樹(東京科学大学)
・新型コロナウイルスのパンデミックからの教訓と今後に向けて
和田 耕治(国立健康危機管理研究機構)
指定発言者:鈴木 規道(千葉大学予防医学センター)
指定発言者:黒須 一見(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所)

<所感>
「葬儀の主催者がいない場合」の話や、費用負担の話はでなかった。
本日、厚労省から新しいガイドラインが出た、とのこと。


◆ランチョンセミナー2
10 月29 日(水) 11:45~12:45  第2 会場(交流ホール)
健診・レセプトデータを活用した健保組合向け医療費ベンチマークの開発および健康増進に向けた日本
生命の取組み
座長:高本  洵(日本生命保険相互会社)
演者:五十嵐 中(東京大学大学院薬学系研究科/横浜市立大学データサイエンス研究科)
演者:衣川  潤(日本生命保険相互会社)
共催:日本生命保険相互会社

自治体が持っているデータを解析することの重要性を、自治体に分かってもらうには、医療・介護・予防接種にかかる費用と、それがなければ生じる医療費の負荷を、見える形で示す必要がある。「介入すると、いくら医療費が抑制できる」というお金の話は重要。「各自治体でいくら抑制できるのかを示すには、各自治体のデータを解析する必要がある。」という順序で話を持っていく。

<所感>
研究者目線からは各自治体をどう説得するか、という話になる。一方、人材不足の各自治体は「データの重要性は分かるけれど、解析したり解析してもらったりする余裕がない」と言う。各自治体任せにしないデータ収集ができれば良いのだが、ナショナルデータを作るには程遠い。


◆講演2
10 月29 日(水) 13:30~14:20  第1 会場(中ホール)
音楽とともにある公衆衛生 ―人々の中へ、そして公衆衛生の力に―
座長:曽根 智史(国立保健医療科学院名誉院長)
演者:
・オペラやクラシックを通じた子どもや子育て世代への支援 -音楽がつなぐ親と子、人と人-
松居 美樹(るーぽ(絵本de オペラ)・声楽家)
・公衆衛生が「art」であるという意味 -音楽を通じて考える公衆衛生の原点-
守田 孝恵(獨協医科大学 大学院 看護学研究科)
音楽も公衆衛生もアートである。技術を磨き続ける。
ファシリテーター:田邉安紀恵(るーぽ(絵本de オペラ)・ピアニスト)


◆メインシンポジウム1
10 月29 日(水) 14:30~16:00  第1 会場(中ホール)
フェーズフリーの地域づくりと健康危機管理
座長:尾島 俊之(浜松医科大学健康社会医学講座)
危機対応にしても、日常の健康づくりにしても、平時からフェーズフリーでつながっている。
   奥田 博子(国立保健医療科学院)
演者:
・牧之原市における地域づくりと災害への備え
古川 馨子(静岡県牧之原市役所健康推進課)
・足立区における顔と顔が見える地域づくり
馬場 優子(足立区衛生部)
「健康づくり推進員」の活動を広げた、災害もやる。八潮市の道路陥没事故のときは、足立区の銭湯を無料にして埼玉県民を受け入れた。15000人強に使ってもらえた。
・生活協同組合による普段からのつながりづくりと災害時の被災者支援
中谷 隆秀(長野県生活協同組合連合会)
・フェーズフリーなまちづくり
菅野  拓(大阪公立大学大学院文学研究科)
指定発言者:遠藤 綾子(陸前高田市福祉部保健課)
平時からやっていることは災害時にもできる、やろうとしていたこともできる、やっていないことはできない。

<所感>
「八潮市の陥没事故で足立区が公衆浴場を埼玉県民に無料開放した」のは、良い取り組みな面もあるが、お金で解決した政治的な動きという感じもして、ちょっとモヤっとする。それって本当に必要?という部分が抜けている気がする。
陸前高田の遠藤さんが言っているのは、まさにその通り。顔が見える関係を作る地道な地域活動はやっぱり大事です。
フェーズフリーで本当に大事なのは、「決定しない意思」とか、「政治に抗うプロフェッショナリズム」とかだと思うが、そのヒントは得られず。
災害を支えるのは、特定の人だけでは、回らない。「包括的な取り組み」を「1つ1つ丁寧に」。


◆シンポジウム25
10 月29 日(水) 16:20~17:50  第7 会場(映像ホール)
COVID-19 と保健所の記録映画「終わりの見えない闘い」が残したもの
座長:城所 敏英(公衆衛生保健所活動研究会)
   工藤 恵子(帝京平成大学ヒューマンケア学部看護学科)
演者:保健所にカメラを据えて10 か月━「終わりの見えない闘い」を製作して
   宮崎 信恵(ピース・クリエイト有限会社)
   住民が見える、住民から見える保健所
   向山 晴子(世田谷保健所)
   感染症まん延等による健康危機を見据えた保健所人材の育成と平時からの体制整備について
   越前屋愛樹(一般財団法人 日本公衆衛生協会 健康危機管理支援部)
   コロナ禍から働き始めた保健師の思い
   大石 赳瑠(静岡県中部健康福祉センター(静岡県中部保健所))
・宮崎 信恵
若い人が保健師になりたくないと言ったらどうしようかと思っていたが、反応は逆だったので安心した。撮影中に自分がコロナにならなくてよかった(笑)。
・向山 晴子
コロナ初期は保健所でカロナールを処方した。それで一晩乗り切って、CLにつなげた。
コロナ後はACPに力を入れるようになった。やっぱりACPができていなかった(遠くの家族が蘇生してほしいと言うとか)。
・越前屋 愛樹
感染症危機マネジメント研修で、この映画を使っている。研修はR3からスタートし、R5から受講生の感想が変わってきた(コロナを知らない職員が増えてきた)。だから事前学習で映像を見てもらうようにした。感情の共有だけで終わらない演習の組み立てが必要。R6は408人のうち346人が視聴してくれた。映画は、共有されるべき体験・経験を補完する。
・大石
個人情報を流出させるような事故がなくて本当によかったと今は思う。


◆市民公開講座 映画上映会
10 月29 日(水) 18:50~20:40  第1 会場(中ホール・大地)
映画上演 終わりの見えない闘い ~新型コロナウイルス感染症と保健所
世話人:城所 敏英(公衆衛生保健所活動研究会)


◆シンポジウム30
10 月30 日(木) 8:30~10:00  第2 会場(交流ホール)
若手に伝えたい公衆衛生の実践
座長:宇田 英典(地域医療振興協会)
   若林チヒロ(埼玉県立大学 健康開発学科 健康情報学専攻)
演者:実践からみた公衆衛生の責任と可能性
   柳川  洋(日本川崎病研究センター)
   人そして人の和を育て公衆衛生の発展につなげる教育
   定金 敦子(島根大学医学部環境保健医学講座)
   公衆衛生の発展への想いと公的データを活用した実践
   松本 真欣(埼玉県立大学 健康開発学科 健康情報学専攻)
指定発言者:中村 好一(宇都宮市保健所)
ファシリテーター:大木いずみ(埼玉県立大学 健康開発学科 健康情報学専攻)
・柳川  洋
SMONは、疫学調査から「キノホルム製剤原因説」が言われるようになった。
大阪O-157は、カイワレ大根を原因と発表したが、高裁判決では「カイワレ大根からO-157は検出されず、カイワレ大根そのものの汚染があったとするには疑問が残る」と言われてしまった。裁判官を説得できなかった。
たばこ対策は「喫煙者半減」と訴えたが、業界の反対にあって健康日本21に入れられなかったバトルがある。

<所感>
SMONを思うと、現代なら、こんなに早く疫学調査で分かったかなあ?素晴らしい。
現代では、遺伝子検査が強力すぎて、紅麹の件も当初は自主回収に頼らざるをえなかった。O-157裁判の判決はまちがっているが…行政からの指導や回収命令、営業の禁停止は、やったらやったで訴えられる、やらなかったら不作為を問われる。うーん。委縮したら防げないし。
次に起こりそうなことは「やせ薬(DM治療薬)」。「健康」を名目にして、まるで良いことのようにやせ薬が使われかねないが、その正否は問われずに進んでしまう。肥満の基準値を厳しくすれば、いくらでも病人を作り出せてしまう。やせ薬に頼らず健康を維持していくことを疫学で示す必要がある。


◆シンポジウム50
10 月30 日(木) 10:40~12:10  第7 会場(映像ホール)
モニタリングレポート委員会による「賛否の分かれる公衆衛生対策に関するディベート」
座長:尾崎 米厚(鳥取大学)
   郡山 千早(鹿児島大学)
演者:医療従事者の情報発信の規制について:賛成、反対の立場から
   髙橋美保子(埼玉医科大学医学部社会医学)
   弓屋  結(広島大学 大学院医系科学研究科 公衆衛生学)
   透析治療における保険診療と同等の自己負担について:賛成、反対の立場から
   横川 博英(順天堂大学医学部総合診療科学講座)
   吉田 都美(筑波大学医学医療系)
・賛成は科学をベースに、反対は憲法をベースにしているので、どうしてもずれる。


◆ランチョンセミナー6共催:アイブリッジ株式会社
なぜワクチンを打たないのか。~歴史と心理から読み解く「接種控え」~
日本は社会的規範(?)が強く、打つ人が増えると、みんな打つようになる。
座長:相馬 和平(アイブリッジ株式会社)
演者:町田 征己(東京医科大学公衆衛生学分野/東京医科大学病院感染制御部)

<総論>
・天然痘ワクチンを普及させるときにも、反ワクチンや、ワクチンに関する迷信が広がった。コロナワクチンのときにも似たようなことが起こった。「ワクチンの歴史=接種控えの歴史」といっても過言ではない。
・接種控え(vaccine hesitancy)=強い意志で接種しない人+接種するか悩んでいる人+接種するつもりが忘れていた人+自分が接種対象だとは知らない人。
日本はワクチンへの信頼が最も低い国の1つ(ネット調査by Lancet)。一方でコロナワクチンの接種は一気に広まった。信頼だけで接種控えは語れない。
・接種控えの代表的な要因:3C:信頼、認知しているリスク、予防接種の利便性。
BeSDフレームワーク:階層化したもの。社会規範/推奨などの周囲からの影響も、接種意向に影響する。日本は、ワクチンに対する信頼は低いが、社会規範が強いのが独特。
・Qなぜ人はワクチンに対して懐疑的な考え方を持ってしまうのか:A直感的にはワクチンを打ちたいとは思いにくい。
プロスペクト理論、確率加重関数:主観的確率は、低い確率を高く見積もり、高い確率を低く見積もる。0%や100%といった確実性を好む。→ex:有効性が90%と言われても自分は有効でない方になる気がする。1万人に1人に副反応が起こるなら、自分になるかも。接種しなければ100%副反応が起こらないのは魅力的。
・Qワクチンの発症予防の有効性40%とは:A接種しなかった人と比較して、接種した人の発病率が相対的に40%減少する、という意味。100人に打ったら40人に効果がある、という答えではない。
ということで、「論理的判断(接種する)」は難しく、直感的判断で「接種しない」になりやすい。そういうものだと理解しておくとよい。
・マイケル・シャーマー:信念が先で、信念に対する説明はそのあとにある。=接種しないと決めたら、接種しない理由を積極的に探し、反証する情報を軽視する(確証バイアス)。
だから、拒否的な人に対して、科学的反論や情報提供だけで考えを変えさせるのは難しい(意味がないワケではない)
・Q接種率を高めるための有効な対策は:Aリマインダー、自己負担額抑制、接種券や予診票の配布、オンサイト接種(職域接種など)=ここまでは、モチベが高い人向け。情報提供の工夫、医療者の推奨、教育キャンペーン。=これらは、モチベが低い人向け。
・ネット調査で、日本における科学的根拠の乏しい情報の影響。ワクチンに関する何かしらの科学鉄器根拠のない情報を信じている=10人に1人。2021年に新型コロナワクチンの間違った情報にもっとうまく対応できていたら救えた命=431人(ただし「もっと早くワクチンを導入できたらもっと救えた、という論文の結論ではある」)。
・ワクチン接種におけるコミュニケーションガイダンス:副反応のニュースは多いが、「安全である」という情報もしっかり伝えるべき。

<日本の課題>
・予防接種システム電子化の遅れ:接種後の有効性や副反応の疫学的評価が困難。SMSを活用した接種勧奨等ができない
・研究の不足
介入研究、社会実装研究が極めて乏しい。文化の異なる海外の研究はそのまま実装することが困難。
・市区町村単位での普及啓発/費用助成の格差
住んでいる市区町村によって市民が受けられる恩恵が大きく異なる
・データ解釈の誤解/知識の不足
相関を因果と誤解している人が多い。ワクチンに関して体系的に学ぶ機会が医師ですらほとんどない。

<所感>
コロナのときは、接種控えとは逆の考え、「ワクチンに対する過剰な期待」に困らされました。「みんな打つなら早く打ちたい」と、住民が文句の電話をかけてきたり、接種会場に人が押し寄せたり。日本の同調圧力は、これはこれで怖いと思っています。「みんな打っているから打とうよ」という啓発の在り方では、リテラシーが向上しないどころか、打っていない人を差別する、という風潮を生み出してしまうので、慎重になるべきだと思います。
また「反ワクチン」「アンチ」という「レッテル貼り」は、その行為自体が公衆衛生上のリスクです。ワクチンを打たない人がいても良いし、反対する行為を非難することは排斥行為につながります。「公衆衛生」が「排斥行為」を惹起することは、公衆衛生の自殺行為で、それは歴史が教えている通りです。


◆シンポジウム35
10 月30 日(木) 13:00~14:30  第3 会場(会議ホール)
いま高齢者介護の現場で何が起きているか~持続可能な介護保険システムに向けて~
座長:新開 省二(女子栄養大学 栄養学部)
   岸 恵美子(東京医療保健大学 大学院看護学研究科)
演者:
   佐藤 文彦(白ゆりグループ 株式会社メディカルシャトー)
   在宅介護・看護の現状と課題ー高齢者を孤立させないサービスとはー
   岸 恵美子(東京医療保健大学大学院 看護学研究科)
   高齢者施設における介護助手の導入は効果的か?:全国調査データを用いた多面的検証
   村山 洋史(東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加とヘルシーエイジング研究チーム)
   介護保険制度の持続可能性をめぐる課題
   高野 龍昭(東洋大学福祉社会デザイン学部)
指定発言者:藤原 佳典(東京都健康長寿医療センター研究所)
・   佐藤 文彦(白ゆりグループ 株式会社メディカルシャトー)
人材不足は深刻で、9割は人材派遣会社経由で獲得するが、たとえばNs一人紹介を受けて採用すると100万円、介護職でも80万円を手数料で払うことになり、50人雇うと5000万円かかる、という状態。
・   岸 恵美子(東京医療保健大学大学院 看護学研究科)
人材を増やすことはできない。利用者の自立を促すことも必要。
・   村山 洋史(東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加とヘルシーエイジング研究チーム)
・   高野 龍昭(東洋大学福祉社会デザイン学部)

0 件のコメント: