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2017年1月23日月曜日

中学生のピロリ菌検査は医学的・政策的に妥当か:その1:【はじめに】

中学生など20歳以下の人に対して、「ピロリ菌の感染をスクリーニング検査して除菌する」という事業が行われている自治体もあるようです。今後も事業として取り上げることを検討する自治体が増えることは予想されますが、本当に必要なことなのかどうか、何を根拠に検討すればよいのかは、あまりコンセンサスがないのではないのでしょうか。すでに実施している自治体においても、どれほどの検討を経て事業を導入しているのか、今後も継続か中止かの妥当性をどのように検証しているかは、不明です。
いま「日本ヘリコバクター学会ガイドライン2016」は、「除菌はオフラベルだけど、自治体でやるのがよい」と勧奨していますが、現時点では、医学的観点からも、政策的観点からも、このガイドラインだけを根拠にすることは、あまりに雑で、安易です。
また医師側には、次のような批判が成り立ちます。自治体に事業を導入するよう勧奨する医師集団は、「自治体がやってくれれば、医師集団の発言権も増えるし、存在感も増えるし、収入も増える。ガイドライン通りにやったという実績の1つにもなる。さらにオフラベルの上で自治体が実施するのだから、将来もし副作用が出たり、是非が疑われたりしても、医師集団は免責で、自治体が責任をすべて負担してくれる。だから勧めたい医師集団は、勧めるだけ勧めておいて、面倒なことは全部自治体任せ。っていう魂胆じゃないよね?」と。これに対して、医師側は、このような批判に耐えるだけの説得と、根拠と、展望を、「静かに語る」ことができなければなりません。
さらに自治体側には、次のような批判が成り立ちます。「医師集団が要望しているし、議会でも要望されたし、答弁しちゃったし、ここで要望を飲んでおかないと他に影響が出てしまう。治療することは良いことってガイドラインに書いてあるから、特に反論する理由もなさそうだ。メディアにも取り上げてもらえるから一石二鳥かな。もし必要性が疑われる空気になったら、首長が変わったころにそっとフェイドアウトしよう。そうすれば誰も責任って言わない。っていう魂胆じゃないよね?」と。これに対して・・・繰り返しですね。
くわえて、この事業を実施する責任者(自治体の場合は首長)には、次のような批判が成り立ちます。「メディアにも取り上げられる、医師集団にも恩を売っておける。健康のことなのだから、悪いことであるはずがない。話題性もある、流行りでもある。そして何よりカッコいい。まあ不都合が起きた場合は、自分は専門家ではないので、最新の知見に基づいてやめると誰かに言ってもらおう。話題になるのは最初だけだ。っていう魂胆じゃないよね?」と。これに対しても、繰り返しですが、このような批判に耐えるだけの説得と、根拠と、展望を、「本当に静かに語る」ことができなければなりません。
そこで、感染率や検査の感度・特異度などはどうなっているのか、現時点で世界的コンセンサスがどうなっているのか等、数回にわたり、検証してみたいと思います。私を含めて、統計の専門家やピロリ菌の専門家でない人でも、フェアに検証するための一助に、情報を鵜呑みにしないための一助になれば幸いです。

(計算を簡単にするため、小数点第一位四捨五入で記載しています。そのため、詳細に見ていくと数字が必ずしも合わない場合がありますが、ご容赦くださいませ。論点には影響ありません。)

<目次>
その1:【はじめに】
その2:【ピロリ菌スクリーニングの陽性率・感染率・感度・特異度などの計算】
その3:【篠山市 尿抗ピロリ抗体 陽性率5.4%について、感度・特異度を上げて検証】
その4:【高槻市 尿抗ピロリ抗体 陽性率3%について、感度・特異度を上げて検証】
その5:【ピロリ菌関連の文献まとめ】
その6:【中学生にピロリ菌検査をする場合の問題点・結論・参考文献】
その7:【あとがき】

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