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2022年11月8日火曜日

改正旅館業法について

コロナ患者を含めた、一類、二類感染症の患者を、旅館ホテルが拒否できるようにする「改正旅館業法」のことは知りませんでしたが、この法律における結核の位置づけに関して、厚労省の記述で気になる点があったので、指摘しておきます。

>一方、感染症法上は入院措置等の対象であること、旅館ホテルでまん延すれば他の宿泊者や従業員も罹患・重篤化する感染症であることから、必要な限度で政令で定める期間に限り協力要請を行うことができる必要があると考えている。
>こうしたことから、結核については改正後旅館業法第4条の2第2項柱書きのカッコ書き内の政令で規定することを想定している。

【指摘1】
結核は「入院措置」する疾患ではありません。勧告どまりであって、もう「措置」はしません。逮捕権もありません。
結核予防法の時代は「命令入所」といって、強制的に入院させていました。その反省に基づいて、感染症予防法になってからは「強制的な措置」はなくなりました。
また、「結核は外来通院で加療する」のが、世界的な流れです。

【指摘2】
「旅館ホテルでまん延すれば他の宿泊者や従業員も罹患・重篤化」って、一体どんな状況のことでしょうか。
まず、結核患者だ、と分かっていることが前提なのだから、予防の方法があります。結核患者であると分かっていれば、旅館ホテルで「まん延する」状況が、まず想定されません。まん延するのは「結核患者であることが分からないから」です。
次に、「他の宿泊者や従業員も罹患・重篤化」することは、ご存知の通り「まれ」です。宿泊者や従業員の全員が免疫不全状態であれば別ですが、結核の特徴を忘れた感染症を過度に恐れるこの発想は、コロナから来ている気がします(旅館業界からの圧力?)。

【指摘3】
感染性を前提に「旅館ホテルが宿泊拒否できる」という話にしてしまうと、1類、2類に限らず、他の感染症にも影響が出ます。
たとえば、麻疹、百日咳、B肝、RSV、MRSA、こーいう疾患のほうが、結核よりも巷にはあふれているし、感染力は高いです。
さらに想像をたくましくすれば、「旅館が拒否できるなら、タクシーも、公共施設も、医療機関(精神や療養型)も、拒否できるようにしよう」という動きになっていくことを心配します。
コロナよろしく「感染症は特定の病院で診る」という動きになるかも。でも、医療資源はそんなに潤沢ではなく、いちいち病院に入院隔離させられませんし、そんなに保健所が患者を運んでいられません。

【指摘4】
宿泊者を拒否したら、拒否された人は、どこに行くのでしょうか。改正旅館業法には、保健所の役割が定められていません。
でも、こうやって拒否するだけ拒否しておいて「患者対応は保健所の役割だ」って押し付けられる気がします。
保健所が対応する必要性が"本当にあるのなら"やりますよ。でも、
宿泊拒否された患者を、保健所がとっ捕まえて、医療機関に運びますか?医療機関はホテルじゃないのに。

コロナになって「保健所が大変だ、保健所が足りない」と言われたのに、保健所が増える兆しがみられません。
なし崩し的にまた保健所業務を増やすのならば、保健所に対して人的措置もしてほしいと思いますが、それよりなにより、「感染症」を過度に忌避する傾向をこそ憂慮します。

改正旅館業法による、その後の影響を、心配しています。

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