自宅療養のことを自宅放置と言い換えることには、あまり感心しない。
そもそも風邪は自宅で療養して治すもの。
「『自宅放置』がダメだ」というのなら「全員を入院させるべし」という話になるが、軽症common diseaseにそんな必要はない。
自宅放置が「医者が受診を拒否して結果的に患者が自宅に放置された」という意味なのであれば、ぜひはっきりと「受診拒否療養」などの新語を作っていただきたい。
一方で「自宅放置死」という言葉を使いたいのなら、その中身には2種類あることに気を遣ってほしい。それは、防ぐことができる死だったのか、防ぐことができない死だったのか、この2種類である。
「防ぐことができない死」は「放置していたから死んだ」のではないし、コロナでなくても死んだ。この状態に「自宅放置」の言葉は使えない、誰も放置していたワケではないのだから。
「自宅放置死」を「分かっていたのに入院できなかった人」のことを言うのならば、それはpreventable deathと同じで、医療アクセスやシステムの問題である。"避けられた災害死"に近い言葉で、医療アクセス・システム関連死、とも言える。
「自宅放置死」と表現する場合は、上記の2つを誤解のないように分けていただきたい。
また、"放置したのは誰か"という議論に軸足が行ってしまうのではなく、なぜ防ぐことができたはずなのに防げなかったのか、この医療アクセス・医療システムの何がダメだったのか、という議論に踏み込んでいただきたい。
ちなみに
「保健所が安否確認を打ち切ったのは問題だ」との意見があるが、勘違いも甚だしい。
そもそも病気の診断・フォローは医療機関の本業である。保健所の仕事でも、警察の仕事でもない。
医療機関が患者を断らずに、患者が受診したいときに受診できる体制を作っていれば、「他の誰か」が安否確認をする必要すらない。「1人1人の患者を診察して、診断し、トリアージして、フォローする」のは、医療機関の仕事だ。
保健所にあるのは、電話とパルスオキシメーター配布くらいなのに、患者を直に評価できる医療機関が仕事を保健所に押し付けて「保健所が悪い」と言うなんて、医療機関にはそっくりそのまま言葉をお返しする。
「クリニックが患者のフォローをせずに安否確認を打ち切ったのは問題だ」。
「クリニックが患者を診もせずに受診拒否をして状態悪化したのは問題だ」。
ま、諸悪の根源は「感染症法の取り扱い」にあるし、取り扱いを厳しいままにしてきた大本営にあるけれど。
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