2019年6月7-8日に大分県で行われた第94回日本結核病学会総会に参加しました。
<私の所感>
・「外国生まれ」の結核患者さん対応についての演題が多かったです。
・いま私たちが止めてしまったことの1つに「関係機関連携会議」があります。豊橋市民病院のナースステーションで開催していた会議ですが、出席者は少ないし、話し合うこともできないので、やめてしまいました。
この地域の結核対策が進んだからやめたのではありません。むしろ連携は困難に、課題は多くなっています。
本当は豊川保健所と合同で、複数の医療機関を集めて、結核対策連携会議を開くべきでしょう。
この地域の結核対策が進んだからやめたのではありません。むしろ連携は困難に、課題は多くなっています。
本当は豊川保健所と合同で、複数の医療機関を集めて、結核対策連携会議を開くべきでしょう。
今回あった発表では、大阪市、千葉県、和歌山県、が、積極的に連携会議を行っており、印象的でした。
<シンポジウム8 医療体制の課題と展望>
・2016年11月の特定感染症予防指針に、医療提供体制に関して記載された。で、整備された地域もあれば、ダメな地域もある。予防指針改定時の情況はすでに変わってきているので、次の体制を考える必要がある。
・診療できないorやめたい施設:医師がいない、専門医がいない、スタッフが足りない、技術の継承が困難、不採算。どこも似たような理由。人的資源と不採算。
・新しい施設は、結核に特化した整備は望ましくない、患者はどんどん減るので。つまり、結核病床自体の必要性が問われる。「結核病床」は必要ないかもしれない。
・イギリスでは、すでに「感染性の期間の隔離」という考え方を捨てた。
・千葉県 久保:結核モデル病床等の利用による入院医療機関の確保→連携会議では、統計のみならず、具体的な症例をもとに、課題を出し合って、話し合っている。
・和歌山病院 駿田:結核医療連携会議を和歌山県ではH24からやっている、意見交換がもっともためになる。行政が音頭をとって関係者を集めてやっている。これは大変助かっている。
・近畿中央呼吸器センター 露口:我々も、医療機関に対しての研修を行っている。ぜひ参加してもらいたい。
・WHO treatment of
tuberculosis guideline 4th edに、治療は「患者個人の利益のため、社会の利益のため」と記載あり。
・その地域で、感染症に関心のあるDrや、感染症で困っているICTに、連携会議の必要性を呼びかけると、会議を開催しやすい。
<結核サーベイランスの現状と課題 大阪市保健所 松本健二>
・結核サーベイランスは、ほかの感染症サーベイランスと違って、対策や治療に直結する内容が多い。
・「対策の企画立案と、対策の効果判定」が大事。
・大阪市:罹患率は高い、全国都市部よりも2.4倍。罹患率の推移をみると、徐々に下がっているのは全国と同じ。減少幅は全国より大きい。地域格差は大きい。1保健所24保健センター体制。
・「解析評価検討会」を作っている。1か月に1回、だいたい年に10回。課題の共有と対策の評価。参加者は、結核の外部委員4人(医師2人、公衆衛生1人、細菌検査1人)、大安研、放射線、検査、保健所医師など。20人くらい集まってやっている。
・日本語学校で検診義務のないところに対して、大阪市が検診を実施している。活動性結核の発見率は0.3%程度で高いと考えている。2018年は5000人対象にやって16人の活動性結核を見つけた。
・あいりん地区では地域DOTSのAタイプで週5日間以上のDOTSをやると最も効果的。しかし大阪市はAタイプと言えど週5日で、土日はDOTSやってない。
・解析評価検討会で出したデータや案を、必ず関係機関に還元したり部長に言ったりして、データの重要性を訴えるようにしている。
<教育講演1 外国出生結核患者の現状と対策 結核予防会 総合健診推進センター 高柳>
・6か国:中国、フィリピン、ベトナム、ネパール、インドネシア、ミャンマー、が多い
・外国出生は転出してしまうことが多い入国5年以内と5年以上の患者数が同数、75%が塗抹陰性、複数名で生活している、16%が転出する
・総合健診推進センター:呼吸器には2000人/年くる。予約日に未受診なら、当日中に必ず電話している。
・帰国による治療中断率は50%。また予約日に未受診の人も中断率が高い。
・診察時に必ず確認:卒業予定、進学先、就職先、勤務地の異動、帰国の希望(在留資格、保険証の期限、保険料の滞納)、一時帰国、転居予定
・DOTSノート多言語バージョンを活用。アプリ:VoiceTra、これは、日本語→外国語→日本語で表示するので最後の日本語が間違っていたら、言ったことと翻訳が間違ったことに気がつく。
・ベトナム語はNhaTraがある。あとはポケトークPochetalkで広まってきた。
・外国人DOTS会議は2か月に1回やっている。
・健診結果が来ても、漢字が読めずに放置している人もいる。
・日本語学校の学生は、5%分を、学生保険に入っていると助かる場合がある、技能実習生の保険もある。
・まずは「やさしい日本語」で。治療は日本で!良かれと思って帰ったらとは言わない。
<路上生活者の社会復帰支援・内服支援を通して学んだこと 羽曳野医療センター 谷口>
・路上生活者の支援、すばらしい。看護師さんレベル高い。
<外来結核内服治療患者の保健所との連携支援から 高砂市民病院 中島>
・高砂市民病院に結核病床はない。患者は内服継続者が多い。
・塗抹陰性、PCR陽性で、外来治療にした1例を担当した。診察室では淡々としていた患者だが、Nsは患者の相談にのったところ、「入院しなくていいんだ」と涙した。外来スタートで関与したのは初めて。
→PCR+で、きちんと外来対応にして、入院になるように喀痰再検査をあえてやらなかったのがすばらしい。
<小児結核患者の入院から地域DOTS支援体制のかかわりを通して 秋田総合病院 伊藤>
・秋田で20年ぶりの塗抹陽性の小児。父親が肺結核6年前だった。
・腹痛、下痢、夜間発熱、咳嗽の10歳。bII3。腸結核も合併。兄と妹も肺結核になった。
・入院中の面会は母のみN95マスクして、夜間の付き添いなし。
・入院中の学習支援は教師派遣を断られたのでプリント配布。
・接触者健診は多数になった。
<服薬困難患者への服薬支援方法の検討 結核予防会大阪病院 疋田>
・病院内での患者教育には2パターン、集団DOTSと、個人DOTSがあり、使い分けている。
・集団DOTSに来られない人は、個人DOTS。集団は1回6人。場所は談話室だが、教室のようなイメージ。患者さん同士で結核について勉強し合うことができる!
・感染性があっても、感受性が分からなくても、病棟内で集団DOTSしている、と。
→せめて2週間治療してからのほうがいいのでは?あるいは、感受性が分かってからのほうが…。あるいは外でやったほうが…。
<教育講演 IGRA 東京病院 永井>
・QFTとTSPOT=まったく違う検査だと認識している。どちらが優れているのかを、あまり熱心に比較しても仕方がない。むしろどちらとも(どちらであっても)積極的に使うことが大事。
・シェロスバーグ6th edに「吸入しても感染が成立するのは25-50%」と記載あり。
・IGRAの陽性的中率、陰性的中率は、集団の有病率によって決まる。(感度、特異度が固定の場合)だから、入職者健診のように有病率が低い集団だと、そもそも陽性的中率が低い。接触者健診なら陽性的中率が高い。
・HIV感染者は、IGRAの感度・特異度は6-7割しかない。
・Dorman SE AJRCCM 189 2014:職員健診の結果。最初に陽性→半年後にIRGAとツ反が陰転下した人がいる。一方で、陰性→陽転した人→陰転化。この結果から、陰転化も陽転化も、どちらもあるといえる。IGRAの結果は変動する。カットオフ値は簡単には変えられないので、ベースラインが陰性の人が陽性になったら、2回連続陽性を確認することが大事。IGRAは繊細な検査である。
・IGRA陽性からの発病リスクは分からない、発病者も確実に拾い上げるには至っていない。:Zellweger JP AJRCCM 191 2015
・QFT-PLUSになって、リンパ球数が減っても、TSPOTと同程度になった(かも)。
・感度、特異度は、PLUS、3G、TSPOTとも、同等という論文が多い。
・結核の治療歴のある患者が、免疫抑制剤使うからとIGRA+でINH使うのは、普通はやらない。ここでLTBIとして飲ませるよりも、LTBIかもしれないが飲ませずにフォローし続けるほうが大事。いまのLTBIの有無にかかわらず、発病のリスクが高い患者さんなので、「飲ませて終わり」にしないこと。
<ランチョン1 レスピラトリーキノロンの位置づけ>
・岡田文人:画像診断。有名人。
“Consolidation”は、アミオダロンとリポイド肺炎以外には役に立たない。
書籍「CTパターンから理解する呼吸器疾患」出版しました。
・小宮幸作:感染症
Respiratory 2006:単変量オッズ比で「2週間以上続く咳」が言われるようになったが、この「2週間以上続く咳」の根拠は、実はそんなに割合は高くない。
・キノロン投与で12.5日診断がおくれるが、ほかの抗菌薬でも投与すると診断が遅れる
・10日以上投与すると耐性化が心配
・結核が心配ならTFLXを。
・「診断が遅れ→耐性化し→予後への影響」は、考えられている(論文としてはない)。
・平野の案:今後の研究で比較するとよいデータは「1か月以内に診断したのと、診断に1か月以上かかったもの」「キノロン使った、ほかを使った、何も使わなかった」で分類。おそらく1か月以内の診断では、抗菌薬の使用にあまり差がでない。診断に1か月以上かかったものは、抗菌薬の使用の影響が出るだろう。
<特別講演 結核医療の展望 加藤誠也>
・医療提供体制の整備は2008年から話し合われはじめた。
・2015年から、「診療報酬評価に対する意見・ヒアリング」これ以降2年ごとにヒアリング。
・いま結核の医療費は、総医療費の0.06%。かつてに比べてとてもよくなった。が、病床利用率は33.6%が平均になった。地域差は大きい。
・病床に陰圧は必ずしも必要ない。
・必要病床数は、大半の県で、30床以下で賄えるようになっている。
・結核病床の不採算は深刻化している。モデル病床は、不採算の解決策にならなかった。不採算は1.病床利用率が低い、2.診療報酬評価が低い、3.院内感染対策費用、のために、不採算は深刻化していく。
→平野:不採算の理由をもっと緻密に計算すべきでは?人件費や施設維持費を計上しては、本当に不採算かどうかは分からないから。「ベッド利用回数が少なくて、儲けにつながらないから、やりたくない」のなら分かるが。不採算分を補助すれば解決する問題でもないだろう。
・平均在院日数は平均66.5日だが、地域差が大きい。都内では50日くらいだが、高齢者が増えると退院調整で受け入れ先の問題が出てくる。合併症も然り。
・若手医師にとっては、結核の研修の機会がなくなっている。
・医療連携の課題:地域の医療機関は結核なら結核病院に転院さすことしか考えていない。しかし和歌山県では連携できるようになった。
・不採算を解消するには、
過剰病床を削減する。診療報酬の引き上げ。また空床の場合に費用補填さす。
・都道府県は病床の認可はできるが、撤退の阻止はできない。ので、信頼関係の構築を。
<シンポジウム6 増加する外国生まれ結核患者への対応>
・「外国人」ではなく、「外国出生」あるいは「外国生まれ」と言うようにしている。
・入国前審査は、まだ始まっていない。
<シンポジウム6 医療提供の立場から 西神戸医療センター 多田公英>
・場所によって事情がかなり違う。
<シンポジウム6 留学生結核支援システムについて大分県東部保健所 工藤PHN>
・システムとしても患者としても、優秀なほうのモデル。
・APUで学生が多い。発病者も多かったので、「留学生結核患者支援システム」をH25から作った。
・支援システムの中身は 大学、拠点病院、の、管理者会議を設置した。H25からフロー図を作り、H26から実務者会議で課題を抽出し、関係者の役割を明確にした。フロー図はH26-29で加筆修正していった。
・拠点病院からのタイムリーな情報提供もしてもらうようにした。
・未受診時には大学からすぐに学生にメールが行くようにしたので、未治療やフォロー中止での帰国が減った。
大学の留学生担当者と、健康管理担当者を、つなげる。学業への不安があると治療が続かない。外来治療は学校医との連携も。
・管理団体と実習生受け入れ企業との連携。
・まずは外国人技能実習生管理団体の実態把握を、と。
<シンポジウム6 医療通訳の立場から CHARM 青木理恵子>
・「留学」の在留資格では:
学費は自己負担、
就労契約は必要なし、
資格外労働OK28時間/wk、
国民保健自己負担
→だから留学生と称して働かせたい企業がほしがる。その温床に「留学生」の身分が使われる。
・「技能研修」の立場では:
研修計画が必要
社会保険、雇用契約、日本語学習は企業の責任
・おおくの日本語学校は、株式会社であり、日本語学校は仕事を斡旋している。
・留学生は、忙しくなってしまう、日本語は分からないまま。そうすると、協力してくれるのは会社だけ、という事態になる→会社の思うつぼ。
・借金をして日本に来ている→毎月返済。だから入院に抵抗する。
・医療従事者は、会社とは独立して、直接本人とつながることができる。「相談相手になれる」のは医療従事者だけかもしれない(むしろ唯一の選択枝であることが多い)。
<シンポジウム6 入国前結核検診 諸外国の例 RIT 河津里沙>
・入国前結核健診運営管理の8大要素:誰がこれらの運営管理をやるのか
1健診実施医療機関の選定と契約
2健診対象者関連機関への周知
3実施医療機関への手引き
4実施医療機関からの問合対応
5実施医療機関への研修
6クレーム対応
7不正防止対策と精度保証
8健診事業の評価
・受入国主導の中央主権的モデル:オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア
金がかかる、時間がかかる、でも一貫性があり情報共有はしやすい
・受入国主導の非中央主権:アメリカ、カナダ
現場の情況が把握しやすい、が財政負担は最も大きい、
・IOMとのパートナーシップモデル:英国、ヨーロッパ諸国
財政負担は少ない、手引きが適切なら一貫性がある、がIOMに任せるので国によって認識が異なると問題が起こる
・受入国-健診実施医療機関委託モデル:中東、アラビア湾岸諸国
導入は比較的短期でできる、一貫性は保たれる、が、問題が起きた時の対応は遅い
・誰も管理運営しないモデル
も考えられるが、最終的には高いコストになる。
・課題
1.不正防止対策:詐欺する偽装する業者もある。それがビジネスになっている。ほか健診前に不適切な治療するとかいろいろある。
2.精度保証:業務は大きい。IOM Paul Doglaus
3.事業評価:英国はよくやっている
・入国前健診のその先
在留中:オーストラリアは入国後フォローあり。28日以内に受診が義務な基準がある。結核なければ2-3年フォローして終了。12歳以上でIGRAはやるが、陽性であってもLTBI治療は必須ではなく、フォローする。
出国後:アメリカは1997年にサンディエゴで、メキシコとの二国間支援で始まった。そのあとCDCで全米に拡大。CDC 「Cure
TB」。最後まで治療できたと把握できると治療成績が上がった。
<イブニングセミナー AMR時代における抗菌薬の適正使用 宮下 関西医大>
市中の肺炎にはテトラサイクリンが1stでもいい。
1週間投与して効果なければ、次にどんな抗菌薬を投与しても効果はない。
<シンポジウム7>
新しいゲノム解析の流れと応用。
インバウンドのインパクト、マスギャザリング考えることが、対策には良い。
WHOは新しい技術の開発を途上国に応用、すでにRFP耐性は遺伝子で分かる。
日本でも感受性検査について、予防指針に入れたい。
<ランチョン9>
喀血死=窒息死
喀血のうち結核は10%程度で、ほとんどはMACや肺アスペルギルス症などの慢性感染症。
QOLにしか寄与しないと思っても、実は少量喀血は致死的イベントのリスク。
BAEという方法で治療できることを知ってもらいたい。
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