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2018年6月19日火曜日

健康危機管理 感染症:平成29年度国立保険医療科学院専門課程Ⅰ保健福祉行政管理分野分割前期(基礎)受講メモ

健康危機管理 感染症】
6/2 NIID 大石:感染症と健康危機管理>
NIIDは多機能な仕事をやっているが、職員は300人くらい。そのうち感染症疫学研究センターは職員40人、FETP7人で、1-6室まである。感染症法の111疾患すべてカバーは無理。感染症疫学研究センターはdry lab
AMR研究センターがハンセン病研究所内に作られた。
FETPの自治体派遣以外の研修生はこれまで無給だったが、2017年度から非常勤職員として有給となった(そのかわり、バイト禁止となった)
・発生動向調査の課題:syndromic approachができてない。たとえば、重症肺炎、CDCではSARIとして届け出ているが、NIIDでは「疑似症定点」のみ。
H7N9、減ってはいるが、ヒトに50人くらい感染した。トリはなかなか死ななかったが、最近死ぬようになって高病原性になってきた。
・「疑似症」患者を届け出可能なのは、一類感染症のみ。
Event-based surveillanceは、WPROの葛西Drによれば、WPROEBSを作った、と。
AFP症例、途上国ではポリオはまだ根絶してないので、モニターしているが、日本ではポリオは終わったのでモニターもなくなってしまった。届け出の疾患でなくなった→症候群の状態であっても、届け出にすべきだ、と。
AMRは、特に家畜に抗菌薬を沢山使用しており、世界的にctrlが問題。
2003SARS流行。200211月からSARSは出ていたが情報なくWHOすらずっと知らなかった。20033月にWHOが気づいてalertを出したときにはすでに世界に広がっていた。
2016年ジカウイルスのPHEICは、ジカに対してではなく、症状に対して出された。問題は、急性症状ではなく、先天性ジカウイルス感染症だった。
・ジカウイルスは、2016年にシンガポールで国内流行→急に2016年に検知されたが、これだけ2016年に出ていれば、それまでにもあったと予想される。調べてなかっただけのよう。小頭症0人だが中絶はあった模様。
・ジカの性行為自粛推奨を、いつまで出し続けるか、が問題。
・多剤耐性菌の世界的状況。日本もあるがまだ少ないほう。東南アジアは、CREMDRANDMもひどい。日本はMDRAよりCREが多く、その中でIMP型が多い、プラズミド型。
・プラズミド型のCREは多菌種に伝播するので、アウトブレイクを見落としやすい。
2016年関空での麻疹アウトブレイクは、初発例は薬疹疑い。近年、麻疹が少ないので、Dr’s delayが多い。
・関空の麻疹は、スーパースプレッダーがいたが、TV等の情報をみて「自分のこと?」と電話してきてくれたので分かった。
・関空の麻疹アウトブレイクでは、修飾麻疹が多かった→ワクチン打ってても暴露すれば発症した。
・自治体による麻疹患者の情報共有は、徐々に定着しつつある。

6/5 厚労省 結核感染症課 松浦:感染症法総論・感染症対策の最近の動き>
・一種病原体(国内での所持は原則禁止)は村山NIIDBLS4で管理。
・性感染症対策は、事業として、国、自治体で行っている。

6/5 厚労省 予防接種室 山岸:日本の予防接種制度>
・予防接種の費用負担の経緯。昭和23年~56年は、国、都道府県、市町村で1/3ずつだった。昭和56年~は国、都道府県の費用負担が廃止され、一般財源化され市町村の負担になった。平成11年までは法定受託事務、平成11年からは市町村の自治事務になった。平成25年からA類は地方財政措置を2割から9割に引き上げ。
・現在、A類は負担の9割を地方交付税で手当て、1割を市町村。B類は3割程度を地方交付税で手当て、7割を市町村(高齢者インフルエンザは多くの市町村で一部実費を徴収)。
・予防接種法では、第5条で予防接種を行うのは市長村長とされていた。ただ市町村がやるといっても市町村にはDrがいなかったので保健所長がアドバイスしますといって「保健所長への委任」の項目ができた。
・緊急時のワクチンは、「不足している」という情報が流れると、病院や診療所が取り込んでしまうので、本当に不足してしまう。ワクチンが偏在しないためには、情報のコントロールが必要。
・新型インフル等対策の基本方針として、2つ。「1、感染拡大の可能な限りの抑制と健康被害の最小化」「2、社会・経済を破たんに至らせない」。極論、患者の総数が減らなくても、ピークを減らして、医療提供のキャパの範囲内に収まるように、なでることができればよしとする。

6/7 NIPH 温泉川:食中毒予防対策への保健所の役割>
・平成10年~13年は、サルモネラ対策、ビブリオ対策をして、事件数が急に減った。
・平成10年→平成28年と、事件数は減少しているが、近年は下げ止まっている。
・アニサキスの届け出は、出てくるようにはなったが、まだまだ届け出が少ない。→届け出制度の整備を。
・患者500人以上の食中毒の発生件数は、近年も続いている。大量のカレーや、フェスなど、イベントが盛んのため。
・食品安全基本法は平成15年制定。千葉のBSEが出て作られた。→それまで農水省が管理と運営の両方をやっていたのを分けて、食品安全委員会を作って管理をするようにした。
・食品衛生法 第2条に、国・自治体の責務がある。この法律では県=政令市=中核市の扱い。自分のところで調査も検査もする→自分たちもGLPに基づいてやれるかが問われる。→GLPに予算は付きにくいが、感染症ではつけることを考えているらしい、と。
・食品衛生法 第6条、販売を禁止される食品に、シアンを含む豆や、フグがある。「ただし人の健康を損なうおそれがない場合として厚労大臣が定める場合においてはこの限りではない」とあり、安全委員会諮問を通して決められる。この場で、陸上養殖のフク肝は「待った」をかけている。
・農産物での汚染について。EHECや赤痢菌は少量で発症するため飲食店等の原因施設以外に、原材料の遡り調査を実施する必要がある。衛生部による直接の調査は困難なため、農林水産部局に依頼する必要がある。しかし、調査側は原因が分からないから調べるのだが、風評被害につながるとして積極的な協力を断られる。
・食中毒の原材料の遡り調査は、農林水産部門等と協力して調査を実施るること、と平成25329日食安発0329通知にある。
・ほか、広域流通食品、複数自治体で発生した場合などのとりまとめは、原因施設等を所管する保健所が取りまとめる。感染症が疑われる場合は共同で調査を実施する。と通知されている。
FEPTへの協力依頼は、遅くなったと思わずに、あとからでも頼んでよい。

6/7 土浦保健所 緒方:院内感染対策への保健所の役割>
・院内感染対策のため、「保捻除支援専門家紹介システム」がある。認知度は高い。利用は少ないので、どうぞご利用を。ただ、このシステムをもっと使いやすくする必要がある。
AMR対策は、人間だけやっても仕方がない→ワンヘルス・アプローチが大事。
・地域院内感染ネットワークの種類には、加算による場合と、都道府県全域で行う場合と、医療圏域で行う場合がある。
・加算の場合、加算1は数千万円、加算2は数百万円。加算1はカンファ開催や加算2を支援すること、加算2は加算1のカンファに参加することが求められている。どちらもない中小病院の支援が必要。
・加算を算定しない病院のネットワークへの参加促進では、模範的なラウンドが大事。これ、やれるまでに3年くらいかかる。
AMRに関する提言では、「保健所を中心としたAMR対策や院内感染対策のための地域連携ネットワークを支援することが望ましい」「加算算定の有無にかかわらず、地域連携ネットワークの構築に努める必要がある」と。→保健所に他者が求める役割は増える一方で、保健所や行政の人手は削減の一方を鑑みるに、単に責任の所在を押し付けただけになりかねない。

6/8 FETP 錦:疫学調査の基本ステップ>
・エピカーブ(流行曲線)を描くとき、X軸の目盛り幅は、潜伏期間できめる。X軸とY軸の交点からいきなりスタートせず、すこしスペースを設けるとよい(患者ナンバー0の可能性を忘れないため)
・コホート研究(後ろ向き)=集団がくくれるとき=曝露群と被曝露群で「疾患の有無」を比較=相対危険度
・症例対象研究=集団がくくれなくてもOK=症例群と対照群で「曝露の有無」を比較=オッズ比

6/8 FETP 松井:感染症サーベイランスとは>
NESIDの特徴:CSVデータの利用ができるが、個人情報の量は疾患によって内容が異なる。自治体は他自治体のものは見られないが、FETPはすべて見られるので、疾患によっては個別でトレースしている。
NESIDが平成303月から更改されるが、使いやすくはならない。総務省で一元管理するのにお金食われる。

6/8 葛飾区保健所長 中西:保健所における感染症対策>
・明治30年制定の伝染病予防法下で、腸チフスや猩紅熱は隔離していた。隔離不要になっても法律は100年続いた、隔離規定を変えられないのは当時「ハンセン病の隔離規定を変えるのが大変だから」と言われていた。
・感染症法関連は、まず伝染病予防法と性病予防法とエイズ予防法が統合されて、らい予防法は廃止され、平成11年に感染症法になり、結核予防法はあとづけで統合され、平成19年に現在の感染症法になった。
・食品衛生法では、食中毒発生→保健所長に届け出
・感染症法では、感染症発生→都知事に届け出→市町村に委任→保健所長へ、の流れ。
・疥癬は、感染症法にはない疾患だが、積極的疫学調査に入っている。
・保育園、幼稚園、施設での感染症発生は、対応を急ぐこと。
・症例定義は、はじめは、なるべく漏れがないように広めに設定して、調査の伸展や分析によって狭い症例定義に変えていくのが望ましい。疑い例=広めの症例定義、確定例=狭い症例定義、に分類することが多い。
EHECは、保育所での発生は、幼稚園ではなく保育園が最多。
・感染症のヒストグラムは、必ず終結まで見届けること。潜伏期間×2倍。
・たとえば「O-157ではない」と医療機関から言われても、本当に調査したかどうか(抗原や確定培養)を確かめること。フツーの便培しか出してなかった、というオチがよくある。
・日向市 サンパーク レジオネラ 自殺。これは問題だった。

7/7 NCGM 大曲:NCGMでの特定感染症指定医療機関としての対応>
・患者受け入れまで:診療班長と渉外担当係は、兼務しることもある。診療班には、フロアチーム、医師チーム、1回外来連絡チーム、渉外チームがある。
NCGMは、感染症は常勤6-9人、後期レジデント6-9人。ただ、本物だとDrだけで44人必要と試算している→いざとなったら、他科からも引き抜く。感染症のシフト中は他業務なし。
・今後の課題:標準的治療の確立→ECMO含め、通常の集中治療をちゃんとやるのは大事。これだけで助かることがあることも分かっている。
・リベリア帰りエボラ疑い搬送受け入れ事例:想定外はいっぱいあった。
到着まで15-20分→渋滞でさらに遅れた。待っているDr側もPPE着っぱなしで辛いが。
搬送の車は民間救急車だった。検疫所の人が同乗していたが、検疫所Drが数人いたらしい。厚労省のリエゾンとして正林さんも一緒に乗ってた。
入院の説明が行われていなかった→患者は検査のためと言われて搬送された→最後は検疫法で入院させた。
入院中、Drゴーグルは曇る曇る。ダイビング用の曇り止めは効いた。
入院食、ハラール対応可能にしておいてよかった。食器はすべてディスポ。トレイはディスポではなかったが捨てた。アビガンは手に入った。
入院中、意図に反して個人情報がもれていった。厚労省の正式なプレスリリースすら、患者が知るよりも先に出されてしまい、「自分の検査結果を先に自分が知れないのはおかしい」と言われた。ごもっとも。
2日目の解熱を確認し、PCR2回目陰性→退院。こっそり裏口から出た。入国審査が実はまだだったので、羽田へ戻った。医療費は国(このケースは検疫法)
NCGM職員の健康監視体制:疲れちゃうので、症例従事中は他の仕事はやめた。精神科Nsをリエゾンにつけたほうがよかった。もしエボラ陽性であったとしても、職員は従事終了後はもとの業務に戻っていいと思われるが、社会的に認められるかどうか、難しい。家に帰らないDrもいた。

7/7 NCGM 加藤:第一種感染症指定医療機関における診療について>
・「第一種感染症指定医療機関」は、いまは要件なし。病院独自の検討が必要。
・歴史:1886年、「避病院」にて、菌が分離できるよりも前から隔離していた。避病院=死病院=入って死ぬ病院、と言われていた。

7/7 NIID 宮崎:感染研のレファレンス活動>
・感染症検査の質の確保のため、感染症法の一部を改正し、H28年から自治体が病原体検査の品質確保のための精度管理をするようになった→行政検査の質の確保のために、外部に調査を委託することを義務付けた→ハードルが上がった。
・課題:検査能力の維持のための専門技術者の人事的維持→検査自体が困難になっている。また病原体の分離同定と解析を、共通の方法で一連の作業として実施するための、人的財的資源が不足。

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