<6/20 NIPH 種田:医療安全>
・注意と不注意は共存する。
・各病院の担当者を一堂に集めて、つなぐ、のも大事。
・安全文化=組織において、安全を優先すること。チェルノブイリで生まれた考え方。
・医療事故=patient safetyという。
・「no blame 、no shame、no name」非難したり、辱めたり、個人を名指ししたりしない、医療安全対策を。
・組織事故におけるスイスチーズモデル、危険が穴をすり抜けて事故に至る、どこかで引っかかれば防げる。最後のチーズは患者。RCA=root cause analysisをする。
<6/21 NIPH 福田:国民医療費と医療機関経営>
・国民医療費は、1兆円/年ずつ増加。2000年に減っているように見えるのは、介護保険が始まって医療→介護にお金が移っただけ。
・平成26年度国民医療費は40兆8071億円。
・医療費に占める薬分は、改定のために平均は下がっている。
・医療費の財源:公費(国庫、地方)、保険料(事業主、被保険者)、その他(患者、その他)。公費38.8%で増加つづけている、保険料48.7%で半分を割っている。全体としては、財源は、上げようがない。
・国民医療費の世界比較は総保健医療支出で行い、一般的にOECDのデータをGDP比にして出すもの。そうしないと「医療費の定義」が国によって違うので、単純比較できないため。総保健医療支出のOECDの定義は、厚労省の国民医療費の定義よりも、範囲が広い。
・総保健医療支出の比較:1990年ごろは、日本はあまり医療費を使っていないといわれていた。ところが、対GDP比で、今は日本は、米国(16.9%)、スイス(11.5%)に次いで世界第3位(11.2%)。理由は、1.医療費自体が増加、2.GDPが低下。
・医療を経済学的に捉えると、医療機関は利潤(収入-支出)が赤字では運営を続けられない。等価が理想ではあるが現実的でない、黒字が続けるためには必要、ただし配当してはならない→これをもって非営利とする。
・利潤の最大化が目的なのは会社、存在が最大の目的なのは医療機関や行政。利潤の最大化は医療機関の目的ではないが黒字は必要。
・会社は、売るものの値段を自分では決められない→決められるのは数量のみ。医療機関は、国が提供サービス
の値段を決める→医療機関は価格受容者(price taker)と言える。
・非営利性に関する医療法の規定:第7条「営利を目的として、病院、診療所、または助産所を開設しようとする者に対しては、前項の規定にかかわらず、都道府県知事による医療機関開設の許可を与えないことができる」。第54条「医療法人は、剰余金の配当をしてはならない」。
・損益計算書と貸借対照表:収支の合計は一致する。
損益計算書:わかりやすい実態把握のために、1年間の収支を決められた項目に従って記入したもの。
貸借対照表:ある1時点で持っているものや借りたものを書いたもの。1日ごとに変わるものなので、たいてい毎月作って、年度末にもしっかりしたものを作る。
・損益計算書
費用の部:医業費用、医業外費用、臨時費用(特別損失)。医業費用には、材料費、給与費、委託費、設備関係費(減価償却費を含む:何年も使える建物や機械への考え方。ただし価値が減るものだけ)、研究研修費、経費がある。医業外費用には、支払利息がある。臨時費用には、固定資産売却損(災害とか、安く売ってしまったとか)がある。
収益の部:医業収益、医業外収益、臨時収益(特別利益)。医業収益とは、もうかった分ではなく、入ってきたお金であり、日常的な活動の収入のことで、入院診療収益、外来診療収益、保健予防活動収益がある。医業外収益とは、医業の対価ではない収入のこと。受取利息、運営費補助金収益がある。臨時収益とは、その年だけ偶然発生したもので、固定資産売却益がある。
経常費用=医業費用+医業外費用
経常収益=医業収益+医業外収益
経常利益or経常損失=経常費用-経常収益
ほか損益計算書には、税引前当期純利益or損失、法人税、住民税、事業税負担額、当期純利益or損失がある。
・貸借対照表
資産の部:流動資産(1年で現金にかわるもの)、固定資産。流動資産には、現金預金、医業未収金、医薬品、診療材料、前払費用がある。固定資産には、有形固定資産(土地、建物)、無形固定資産、その他の資産(減価したものはここに載る)がある。
負債の部:流動負債、固定負債。流動負債には、買掛金、支払手形、未払金(薬など)がある。固定負債には、長期借入金、退職給付引当金がある。
純資産(資本)の部:純資産とは、医療機関が持っている純粋な資産のことで、純資産額として表され、当期純利益または純損失がある。
・主な経営指標:(分子=費用)/(分母=収益)
経常収支比率と医療収支比率:100を超える=赤字。ただ最近は分子と分母がひっくり返っていることも多い。自治体の財政も経常収支比率が評価指標の一つで、80%以下に抑えると弾力性のある財政運営ができると判断するが、どこも80%を超えている自治体が多い。
入院患者1人1日当たり収益=入院診療単価:経営的には高い方がよい。室料差額を入れずに計算することが多い。
外来患者1人1日当たり収益=外来診療単価:経営的には高い方がよい。
職員1人当たり医業収益:平均給与の2倍必要。
病床利用率=述べ入院患者数/延べ稼働病床数:「稼働率」というときは、利用率と同じこともあれば異なることもある。本当は利用率というべき。
平均在院日数:計算方法は2つある。病院報告の平均在院日数は在院患者延数と新入院患者数、退院患者数から算定する→「病院報告」はすべての病院がする。患者調査の退院患者平均在院日数は退院患者が実際に入院した期間の平均である→「患者調査」は3年に1回、病院を抽出して行う。9月の退院者と10月の入退院すべて。
外来入院患者比率:昔は、高めがよいと言われた。いまは入院/外リア=3.8倍と上昇しているので、あまり言われなくなった。
給与比率:50%を超えると、赤字が増えるといわれる。が、悩ましい。
医薬品費率:昔は高めが良いと言われた。が、院外なら意味のない数字。
・地域医療構想では病床稼働率と言って、病床稼働率=(ある日の延べ入院患者数+その日の退院者数)病床数=が↑になるようドライブする→必要病床数(入院数/病床稼働率)が↓させられる。
<6/21 NIPH 福田:保健医療の経済評価の方法と活用>
・医療の効率性評価が必要とされる背景にあるもの3つ。1.医療における市場の失敗がある→効率的な資源配分の方法の必要性。患者とDrには情報の非対称性がある→価値付けができない。2.医療財源のひっ迫。3.EBMには、臨床のエビデンスのみならずeconomic evidenceも必要だ(economicが優先、という意味ではない)
・効率性を評価する
1.投入と産出の両方を考慮する:医療経済評価では、投入→費用(cost)、産出→結果(outcome)
2.複数のプログラムの比較をする:コントロールがあること。
つまり、高いから×、とだけを考えることはしない。
・ICER:incremental cost
effectiveness ratio:増分費用効果費→たとえば、A薬と新B薬の効果比較は、費用B-費用A/効果B-効果Aで計算=〇〇万円/life saved。この値段に、価値があるかどうかは、負担する人の価値判断による。国民のコンセンサスが得られるかどうかによる。
・費用分析の際には、「誰にとっての費用か」、患者か、保険者か、病院か、など、どの立場でもよいが立場を明確にすること。
・費用の分析方法は4つ。①費用最小化分析、②費用効果分析、③費用効用分析、④費用便益分析。
・①費用最小化分析CMA:複数のプログラムで効果が同じ場合→費用の少ない方が効率的。
・②費用効果分析:CEA一般的にはこれ。効果の指標は、life saved(何人の命を救えたか)、life year gained(何年の余命延長を得たか)、HbA1c、血圧値など、どれでも良いが、その指標がもたらす効果の意味は判断が必要。
・③費用効用分析CUA:効果として、生存年数とQOLの両方を考慮したQALY(quality adjusted life years:質調整生存年)などの効用値を用いる。様々な活動や行為について評価結果を比較可能だが、QOL評価方法が課題。最近はEuroQOLで。
・④費用便益分析CBA:効果をすべて金銭単位であらわす。ダムや道路はこれをすでにやっている。医療ではいまは使われていない。効果を金銭単位に換算する方法が課題→たとえば1年の命を金銭に換算することが難しい。
・増分費用効果比の域値:③のQALYで出た結果が、社会的には「いくらまでの追加投資が許容」されるのか。英国は£20000~30000/QALY、米国は$50000~100000/QALY、日本は500-600万円/QALYくらい?と。
・HPVワクチン→ICERで検討するとワクチン接種費用よりも医療費削減幅の方が大きくなる。
・イギリスの医療保障制度:NHS:保健医療サービスの供給が国の責任で行われる、費用の大部分は一般財源(税金)で賄われる。全国民に対して原則無料、予防やリハなど含む包括的な医療保障。ただしサービスの供給は予算の範囲内で計画的に行われる。
・イギリスの国立保健医療研究所:NICE:1999年にspecial health authorityとして設立。医療技術評価(NHSに対して給付範囲の価値判断をする)、臨床ガイドラインの提示。医療技術評価のプロセスは、分析:学術的な数値→評価判断appraisal、結果の解釈や影響の考慮→最終決定
・NICEの課題1:費用対効果を含む評価に時間がかかる。またNICEガイダンス作成のプロセスは承認後1-2年かかる。→その間、医療機関はガイダンスが出るまで新薬などの採用を様子見する。→STA制度を導入。承認前から評価を始めて、その元になるデータはメーカーから出してもらった。
・NICEの課題2:「推奨しない」という判断を下すと、医療技術のアクセスに関する問題を顕在化してしまう。→そのため、費用対効果の悪い医療技術については、価格を下げることにより、「費用対効果」と「患者のアクセス」を両立する手法がとられてきた→「患者アクセススキーム」
・患者アクセススキーム:たとえば抗がん剤。CPないしPRに至らない場合は、その費用をNHSにメーカーが払い戻す。メーカーにとっては、本当は価格を下げる方が「NHSの推奨」を得やすいが、「払い戻す」方法をとっている→実は、こうすればメーカーは他国での価格を下げずに済むから…。
・費用対効果評価の一連の流れ:対象品目設定(費用対効果評価専門部会)→データ提出→再分析の実施(NIPH)→総合的評価(アプレイザル)
・中医協での禁煙治療の議論:「医療課長:ニコチン依存症は疾病である→予防ではなく治療である→保険が使える」→「保険者:エビデンスを見て評価をしましょう」→「中医協:米国での研究事例」→「保険者:海外のデータだけではダメ。もっと具体的な費用対効果が分かる資料を。」→「マルコフモデルの経済評価を使用。割引率0%は、教科書的にはNoだが、中医協の資料として使われた。いずれにしてもICERで7万円弱/年の効果あり」→「保険者:医療費削減につながることは分かったが、推論であって、エビデンスではない。保険適応した場合の費用対効果のエビデンスは、いまのところない」→その通り。
・乳がん検診の費用対効果:2年ごとの視触診+マンモ=増分費用効果比367万円/生存1年延長で、これはコンセンサス得られる。毎年視触診+マンモ=増分費用効果比801万円/生存1年延長となり、これはやりすぎと言える。
・胃がん検診、は、データなし。今後数年以内に出していきたい。
<6/22 NIPH森山:リーダーシップ・チームマネジメント>
・組織とは:バーナードの定義がよく使われる。意識的に調整された2人またはそれ以上の人々による活動や諸力のシステム。
・学習する組織(senge) →楽観的というか、人を信じすぎというか…。
・NPM:公的機関が民間部門のマネジメントを取り入れること。そもそもは、「民間が公的部門に管理運営を学んだ時代」があった。
<6/23 NIPH森山:戦略論・戦略ツール>
・「MBA経営戦略」ダイヤモンド社、は、グロービス(株式会社立から学校法人になった)が出したもの。
・「病院経営の教科書」より:セグメンテーション(市場細分化)は、「儲ける」ことを考えると、正しいんだが、公衆衛生の戦略にはなりえない。
・SWOT分析:やってもいいけど、分析結果は、ミッションに先立つものではない。これを間違えないこと。
<6/26 福知山公立大学 岡本:保健行政における情報管理>
・統計法に基づく「数」と、そうではないもの(NDB、KDBなど)は、異なる。
・市町村別がん検診の状況
市町村別保険医療福祉データウェアハウス構築に関する研究→ http://www.jmedicine.com/
・ベイズ推計:N(母数)の違いによるブレを少なくする方法。母数をそのまま比較するのではなく、分母分子に一定の数値を加えて出すもの。
・NDBナショナルデータベース:患者情報は匿名化されているが、個人立の医療機関については匿名化されることなく個人情報のまま収集されている。しかし、根拠法となる高齢者医療確保法は、統計法ではなく、「医療機関の種類別」の収集しか認めていない。高齢者医療確保法では、患者の個人情報は入ってない。→法的整備をすべき。
・NDBの法的根拠:高齢者医療確保法第16条。
・統計法と行政機関個人情報保護法の違い
統計法
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行政機関個人情報保護法
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開示、訂正、利用・提供停止の請求
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原則可能:第33条
各号に定める行為を行う場合には、行った統計調査に係る調査票情報を提供できる。
ここで個人情報保護法は適用除外され、個人が特定されても開示、訂正、利用提供停止請求権はない。
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原則不可:第8条
利用目的以外の目的のために利用または提供してはならない。もっぱら統計の作成または学術研究目的のためなら、利用提供できる。
何人も自己を本人とする保有個人情報につき利用・提供の停止を請求できる。
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守秘義務、罰則
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あり。守秘義務あり、罰則2年以下の懲役。
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なし。守秘義務罰則の規定なし。
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・KDB国保データベースの情報:市町村の個人情報保護条例に基づいて運営される→市町村によって異なる。
<6/26 福知山公立大学 岡本:保健行政と法体系>
・法令について:憲法以外はすべて法律と同じであって、国民を拘束する。
種別
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憲法
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法律
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政令
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省令・府令
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告示
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定めるところ
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国会
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国会(憲法59条)
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内閣が法律の委任に基づき定める。法律の委任がある場合を除いて、罰則を設けることができない。
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各大臣が「主任の行政事務について法律もしくは政令を施行するため、または法律もしくは政令の特別の委任に基づいて」発する各省の命令
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法律や政省令に基づいて外部に公示する行為
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命名法
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~法
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~法施行令
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~法施行規則、療養担当規則等
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・法律用語
選択的:A又はB若しくはC=又は>若しくは=A or BとA or C。
並列的:A並びにB及びC=並びに>及び=AとB、または、AとC。
・通達、訓令:上級行政機関が下級行政機関に対して、内部的な事務運営などについて発する命令。訓令は職務運営の基本事項、通達はこれらの細目的事項や法令の解釈運用方針に関する示達事項。いずれも法令ではなく、国民を直接口側するものではない。通達は官報にのらない、訓令は官報に載る。
・省令室(格上)>訓令室(格下)
・刑の重さ:死刑>懲役>禁固>罰金>拘留>科料。※拘留よりも罰金が重い。
・刑事法について:罪刑法定主義、黙秘権、公訴時効の3つ特徴あるが、これらは行政処分では適応されないもの、というのが重要。
・罪刑法定主義:法律なければ罰則なし=社会常識では判断できない、という意味。贈収賄罪で重要。
・公訴時効:最高刑死刑の犯罪でも15年、最高刑5年以下の犯罪は3年。
・医療法に位置づけられた医療監視の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
・感染症法の調査権:「捜査」にすると「黙秘権」が発生するので、「捜査」にしない。
・食品衛生法:罰則なし。強制力のある捜査はできない。
・告訴、告発:捜査機関に対して犯罪を申告し処罰を求める意思表示のこと。告訴は被害者または親族によるもの。告発は第三者がするもの。
・公務員の告発義務:刑訴239条:官吏または公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。
・公務に関する罪:刑法第197条:公務員または仲裁人その職務に関し贈賄を収受しまたはこれを要求もしくは約束したるときは5年以下の懲役に処す。請託をうけたる場合においては7年以下の懲役に処す。
・公務員とは:刑法第7条:本法において公務員と称するは官吏(国家公務員)、公吏(地方公務員)、法令により公務に従事する議員、委員、その他の職員を謂う(みなし公務員)。
・みなし公務員とは:判定理由は不明だが、羅列すると次のようになる。中医協の委員、国家試験出題委員、厚生年金基金の役職員、国家公務員共済組合病院の役職員、放送大学の役職員、自動車教習所の役職員、JRの役職員、国際空港株式会社の役職員、駐車監視員、JT役員(JT法あり)。みなし公務員ではないのは、健康保険組合の役職員、支払基金のレセプト審査委員、私学共済、自治医大の役職員。
・行政処分について:刑罰は罪刑法定主義で動くあ、行政法は規定がなかった。そのため、行政手続法を作って処分の考え方を示した。
・行政処分には時効はない。処分が不服な場合は、行政事件訴訟法がある。
・行政処分をめぐる課題:法治主義への不安(大臣による恣意性への懸念、見せしめ的、懲罰的な運用、身内への甘さ)、医療過誤をめぐる北風VS太陽策のせめぎあい、萎縮行政になってはならない、積極的な行政のため厚労省や保健所の機能強化。
・公衆衛生4つの思想基盤:社会による防衛(フランク)、自治体機能を基盤として画一主義による(チャドウィック)、福祉から独立した組織(ラムゼイ)、個人の規則と自治体規則を両輪として推進(シモン)。
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