<4/19 NIPH 武村:地域保健関連法規概論>
立法:法を立てる
司法:法を司る
行政(ほんとは行法):法を行う。でも現実は行政が立法にも関わるのが日本。
・行政とは
定義:国家の統治権の作用を行政と言い、権力分立原則の下での国家作用のうちから立法、司法を除いたもの。法の実現を目的として執行される国家作用。
分類:侵害行政=国民の権利自由に対して、不利益的な作用を及ぼすもの(例:課税処分)。給付行政:国民の権利自由に対して利益的な作用を及ぼすもの(例:道路等の整備、生活保護費の支給)
・行政法とは
民法や刑法のように1つの統一的法典ではなく、多くの法律、分散された条文及び判例で成立する。行政を行う国や地方公共団体を行政主体として、国民や住民との行政上の法関係をルール化しようとする法律。
行政組織法、行政作用法、行政救済法に分類される。
・行政組織法
行政の仕組み(組織)を定めたもの=行政権を行使するために必要な組織に関する法律
国と地方の組織の基本に関する法律=内閣法、国家行政組織法、地方自治法
行政祖いきを支える人的手段である公務員に関する法律=国家公務員法、地方公務員法
・行政救済法
仮に行政権行使によって損害、損失を被らせたときの救済方法を定めたもの=国家賠償法、行政不服審査法、行政事件訴訟法
・行政作用法
それぞれの組織が行える行政作用(活動)の範囲を定めたもの(不利益にならないために)=きわめて多岐にわたる(通則なし)(道路法、河川法、港湾法、大気汚染防止法、食品衛生法、建築基準法、旅館業法、風俗営業適正化法、生活保護法、都市計画法etc)
・保健所の設置の歴史
1937(昭和12)年:公衆衛生技術者の訓練実施のために、都市保健館(東京京橋)、農村保健館(埼玉県所沢)を、国が設置。
1938(昭和13)年:日中戦争~第二次世界大戦のころにあたる。公衆衛生技術者養成機関として、国立公衆衛衛生院を設立。
※いずれもロックフェラー財団の資金援助による。
・保健所の法律
1937(昭和12)年:最初の保健所法制定
1947(昭和22)年:GHQより覚え書き。「保健所機能の拡充強化に関する件」
1947(昭和22)年:保健所法改正公布:ここが自立したスタート。「地方における公衆衛生の向上および増進」
1948(昭和23)年:モデル保健所(杉並保健所)
1994(平成6)年:旧保健所法(昭和22年)改正→地域保健法
1997(平成9)年:地域保健法完全施行。保健所の機能を中心に、市町村と役割を分担。
・保健所数の現在:統合というか、縮小が進んでいる。
指定都市は減少。きっかけは大阪市が区の保健所を減らしたことから。名古屋も1になり、残るは福岡市のみ複数ある。ほかは全て1保健所になった。
中核市保健所は増加で、これは中核市の増加に伴うもの。
政令市は減少。
平成8年には845保健所があったものが、平成9年以降は減少の一途で、平成26年には480となった。
・保健所長の資格要件に関する議論
地方自治を求める側(特に首長)からすると、「規制があること」自体が問題視される。ゆえに規制緩和を求める。
「資格要件は医師」に反対することになっているが、たとえ「医師」でなくても、規制があること自体が問題視され、規制をなくすように反対の声が数年に1度は必ず起こってくる状態。ゆえに落としどころとして医師でない者でも所長に充てることができる条件付きの規定がある。
・地方衛生研究所
1976(昭和51)年:設置要綱(事務次官通知であって、法律ではない)
1997(平成9)年:設置要綱の改定
業務:1.調査研究、2.試験検査、3.研修指導、4.公衆衛生情報等の収集解析提供
<4/19 宇田:概論>
・全国保健所長会への参加は、どの保健所長も、公費で必ず出られるようになっている(参加できるかどうかは各々あるが)。
・保健所は、地域保健法第三章第六条に保健所の業務が書かれており、「14.その他地域住民の健康の保持及び増進」とあるように、法律にないものはやらない、とは言えない。また地方自治法にも保健所の規定あり。
・公衆衛生の変遷:保健所に関する主な関連施策
1945-1969:公衆衛生の対象が明確(全国一律)で、その対応でも成果が上がった時代。
1970-1999:公衆衛生の対象が推移した(全国一律→近接、地域特性へ)地域差、多様性が出てきた
2000~:公衆衛生の対象が複合化した。社会保障、社会福祉との協働が不可欠になった。
・社会医学系専門医協会
「公衆衛生専門医」というと、「公衆衛生学会の専門医みたい」という反対を他の学会から言われて×になった。
長を決めるにも、どこかの学会から選ぶと、他の学会が反対する、という事態になった。
→だから、長は宇田先生になった。
厚生労働省はオブザーバー。
・社会医学系専門医制度は
新臨床内科専門医は、「個の力↑」のみに集中している。
社会医学系専門医制度は、「個の力」も「システムの力」も次第に向上させていくのが主目的。
・健康危機管理能力:組織的努力をするかどうか→これが救急学会と集団災害学会との違い。
・災害時健康危機管理支援チームDHEATについて
構想から制度へ、概念から実務へ。
DHEAT構想が具体化するためには→制度や、計画の中に、書かれているのかどうか、が大事。
またDHEATなど支援団体は、それぞれの組織の「指揮下」に入ってもらう。
<4/20 武村:地方自治制度概論>
・助成金:先に払う/払われる。補助金:後で払う/払われる
・地方自治:憲法第92条~95条に定められる。一定の地域団体が、その地域における政治、行政を、自らの意思に基づき、自らの責任で処理すること。
・地方分権の推進=事務と権限の再分配→税財源の再分配。
・普通地方公共団体の処理する事務について。
法定受託事務とは:「委託」ではない。法で定められ、地方自治体がやらなければならないこと。法令により普通地方公共団体が処理することとされる国、都道府県の事務。
第一号法定受託事務:国の事務→都道府県、市町村、特別区。
第二号法定受託事務:都道府県の事務→市町村、特別区。
・予算内容:歳入の性質別、歳出の目的別に分類する。
款(かん)、項(こう)、目(もく)、節(せつ)
款、項:議会の決議が必要(議決科目)→相互流用は禁止
目、節:議会の議決は不要(行政科目、執行科目)
<4/21 NIPH逢見:歴史からみた公衆衛生行政>
・内務省衛生局編「流行性感冒」のポスターを見ると、予防策は「近寄るな 咳する人に」「鼻口を覆え ひとのためにも身のためにも」「予防注射を 転ばぬ先に」「うがいせよ 朝な夕なに」。これは現在でもやっている充分な予防策であった。
・マキューンテーゼは、病院や医師よりも水道インフラ整備のほうが大事」というような公衆衛生無用論に1970年代に使われてしまうことがあった。
・所得と平均寿命の関係:所得増による寿命延長は、寄与率は高くない。むしろ、1930年なのか、1960年なのか、といった年代で異なる。Preston SH. The changing
relation b/w mortality and economic development.
・ジェンナーが、種痘の開発のため、自分の子どもに接種した、というのは誤り。近所の子どもに接種した。
・近代以前の公衆衛生
古代ギリシャ:ヒポクラテス「空気、水、場所について:
古代ローマ:上下水道
中世ヨーロッパ:ペスト流行時の検疫隔離=quarantineの語源となった=40日間の意味。船がついても40日間は上陸禁止、というもの。
16世紀:壊血病に対して、新鮮な野菜や果実。
・日本の公衆衛生
1937年:保健所の設置
1938年:国立公衆衛生院の誕生
1946年:覚書「日本政府の公衆衛生、福祉行政機構再編に関する件」
1957年:公衆衛生たそがれ論。一保健所医師の手紙が発端。雑誌「公衆衛生」1957年1,3,5号
こんな声が現場から出てくるまでに要した時間はたった10年。
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