平成28年度地域保健総合推進事業発表会
いまから1年前になりますが、平成29年3月6日~3月7日に都市センターホテルで開催された「平成28年度地域保健総合推進事業発表会」に出席したときのメモです。
<発表の傾向>
地域保健総合推進事業の発表は、『○○研究のために「アンケート」を実施し、○○のための「イベント」をやりました』という内容が多い。質疑ができた内容は質疑部分が特に重要。発表の時間がないのがもったいないが、議論ができるとなお良い。
<各発表>
【挨拶:厚生労働省 正林課長】
いま厚労省の1丁目1番地は、タバコ対策。受動喫煙防止のため、健康増進法の改案をなんとか今国会に提出したい。オリパラに間に合わせるためには、1年の猶予期間をみるとすると、いま改案しなければ間に合わない。ただ、様々な反対に合っている。そのため、課長の私は土日もなく、平日も2時、3時と、睡眠時間を削ってでも、仕事に取り組んでいるところ。ぜひみなさんのお力を添えていただきたい。
【DHEAT研究 古屋 山梨県中北保健所長】
Q:「ICS」という単語を使うと、なじみのない行政の人からアレルギー反応が出る。あまり「ICS」という言葉にこだわらなくてもいいのでは?
A:その通り。災害対応の中身がICSを含んでいれば、ICSと言わなくてよいと思う。
Q:DMATは、公衆衛生の仕事まで担おうとして、仕事を広げ過ぎている。
A:DMATは、やりたくて仕事を広げているのではない。担う人がいなくて、仕方なくやった面がある。いまはむしろDMATがDHEATに期待している、と聞いている。
【公衆衛生医師の確保・人材育成 西垣 長野県木曽保健所長】
Q:やめていく人も多いが、その調査は?モチベーションの上げ方は?
A:調査はできていない。やめていく人は多いと思う。ただ、勤務を継続している人の調査はできるが、やめた人の調査は難しい。モチベーションの維持も難しいが、「つながり」を持つことは大事だと思う。
【薬剤耐性感染症対策 中里 佐賀県唐津保健所】
Q:薬剤耐性は、そもそも医者の薬の使い方を直すことに話がいかないと、耐性化の予防にならない。その中で保健所の役割は?
A:3月6日に審議が行われた薬剤耐性対策(AMR)の小委員会で、薬の使い方ガイドライン「抗微生物薬適正使用の手引き第1版」を考える方向になっていた。保健所は、そのガイドライン等に基づいて普及&啓発を担うことになるか。実際は困難だが。
【地域包括ケアシステムの保健師の役割 森松 福岡県糸島保健福祉事務所】
Q:地域包括ケアシステム関連は、まじめにやっているところほど、自己評価が辛い。だからアンケートをとっても、アンケート通り、とは限らない。
A:そうです。
【PT・OTの地域包括ケアシステムへの活動推進事業 清水 東京工科大】
Q:リハに必要な、トータルなコンセプトや、パッケージ化したものがない。またリハが一部しか地域で関われていない。今のままでは、PT・OTが自ら地域には出てこない。
A:そうですね。いまリハ専門職は、そのほとんどが病院勤務なので、病院以外に勤務する人が増えてほしい。
【新生児マススクリーニングの長期追跡体制 山口 鳥取大学】
日本でマススクリーニングを行政の仕事として導入したのは、厚生省の北川さんだった。
最初は、色々な反対に遭った。医者にも反対する人がいた。
【超高齢化社会を見据えた未来医療予想図 飯島 東京大学】
・「メタボ対策」と言ってきたが、「メタボ対策=痩せなければならない」と国民は勘違いしてしまった。
・柏スタディで分かったことは、「しっかり噛んで、しっかり食べる」ことが身体によい、という当たり前のことだけだった。
・フレイルには、3種類ある。
1. 社会的フレイル
2. 心理的、認知的フレイル
3. 身体的フレイル
このうち、1が進行すると、2と3も進んでしまうことが分かった。だから社会的にフレイルにさせないことが大事。
【たばこ対策について 吉見 厚労省】
日本は、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)」を、平成17年2月に批准している。受動喫煙防止対策を実施すること、と文言がきちんとかかれている。この条約があることを、保健医療担当の行政職員も知らない人が半分です。
【受動喫煙防止対策 片野田 国立がん研】
たばこ対策は、ハームリダクション(害を軽減さす)からエンドゲーム(もう終わらせる)に変わってきた。
【子どもとタバコ 望月 対がん協会】
1.第1回の会議では、「一律禁煙」なら、ホテルも飲食店もハッピーだと言っていた(タバコで壁が汚れるコスト、ごみ箱設置のコスト、家族連れが来なくなるリスク、がなくなる)。だから、例外は設けてくれるな、とホテルが、飲食店が言っていた。
2.JTは、これでは困るので、猛反対して、ロビー活動も精力的に行った。
3.第2回以降の会議では、ホテルも飲食店も「なぜ我々がJTの代理戦争をしなければならないのか」と言いながら、トーンダウンしてしまった。
4.「例外」を設けると、順守しているかどうか「監視」が必要になり、保健所が監視をすることになるかも。「例外」を設けたがために、保健所職員の仕事を増やしてくれるな、という意見もある。
【受動喫煙 飲食店等について 大和 産業医科大学】
・タバコ:日本には外来品として入ってきた日本文化にないものだったため、はじめはカタカナで書いていた。
・たばこ:「日本の文化」を強調したい人が、ひらがなで書くようになった。
・いまは、「タバコ・喫煙」がキーワードだが、正しくは「ニコチン依存症」が問題である。「タバコ対策」が完成しても、産業を維持したいJT等は、次には「タバコ・喫煙」と言わずに製品を出してくるだろう。「iQOS」もその一例で、そのうちタバコという言葉を使わなくなる。たとえタバコという言葉を使わないとしても、「ニコチン依存症」を引き起こす物質であることに代わりはない。
<超高齢化社会とフレイルについての個人的な意見>
結局、「自分のこと」のお話。自分にとって「良いこと」は何か、という視点で話をしている。
この落とし穴は、インセンティブと同じで、「いらない」と言われたら弱い。
そんな状況であっても、公衆衛生の役割を果たしていくのが私たちの仕事。
経済主導、マーケット主導に対して、食いつくされるまで変われない?
↓
みんな健康になりたい、と思っているわけではない。
健康のために、生きているわけではない。
歩きたくない人は、何をやっても歩かない。
そんな状況であっても、公衆衛生の役割を果たしていくのが私たちの仕事。
↓
そんな「自分のこと」ばかり話をしなくても、超高齢化でも、大騒ぎしなくて良いと思う。
「ほっといてくれ」と言われてもいいはずなのに、ほっとかないのは、マーケットになるから?
超高齢化そのものが、市場だから?
<公衆衛生全般に関する個人的な感想>
いま私は、臨床を離れた感じはあまりない、WHOなど国際機関ではないがOKと思っていて、だけど国際保健をやってないとも思っていない。
市民病院も、保健所も、大学も、どれも国際保健であり、地域医療であり、公衆衛生であった。
そんな感覚でいる。
私たちの仕事ってなんだったっけ?と、自問したい。
「役割」を忘れないようにありたい。
→今後は、「これは私の仕事だ」と思うこと、思う人をこの分野に入れること、増やすこと。
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