これも少し詰めが甘いですが、危機を感じている方向性は以下の通りです。
(1)私が考える、今後10年で解決すべき母子保健政策の重要課題を列挙する。
① 児童相談所の機能を強化する。
② 市町村の虐待対応部門を強化する。
③ 医療機関の虐待対応に関する理解を促進する。
(2) 母子保健政策において、上記の重要課題の全て、または一部を解決するために、都道府県または市町村が行うべきこと(施策)を、具体的に記述する。
上記①②③は、児童虐待に関する課題である。児童相談所の機能の1つである療育手帳の交付事業等は今回の論点としない。
現在、児童相談所は都道府県の設置であり、虐待を対応する児童相談所職員は都道府県職員である。今後、中核市や特別区では、児童相談所を設置することができるようになり1)、目下、機能のあり方など検討し始めたところである。特別区や中核市は、児童相談所を設置した経験がないことから、具体的な支援やロードマップ等も検討されつつある2)。
ただ、これら支援策がいくら具体的に示されようとも、実際に設置・運営する自治体がはたして満足にできるかどうか、現状では未知のため、最優先課題とした。現在でさえ虐待対応は多忙かつ困難を極め、児童相談所の離職率も高く、一時保護所の空きがない等、ソフト面でもハード面でも課題が山積である。ゆえに、中核市や特別区で児童相談所を持つことは簡単ではないと認識している。
市町村が行うべきことは、まず虐待対応を母子保健の一環として行うというビジョンの明確化である。虐待対応は児童相談所任せ、とか、市町村保健師は事業の計画だけ練って健診や個別対応は外部委託する、という態度では、決してうまくいかない。
その次は、児童相談所職員および市町村の虐待対応部門で、人員を確保し、継続的に教育することである。児童福祉司などの資格を持った職員が一人いたところで、頭数がいなければ、どうにもならない。市町村の保健師も同様で、母子保健をやりながら健診や窓口で虐待を拾えないのでは、話にならないということである。
ハード面も同時に整備する必要がある。一時保護所を十分にもたない児童相談所は、保護をためらう。そしてみすみす虐待死を防げなかった事態は、枚挙に暇がない。これは現在の児童相談所職員なら肌感覚で理解できても、新しく設置する市町村には理解できにくい可能性があり、特に注意を要する。
(3) 上記で述べた施策を実施する際、保健所長あるいは行政医師の果たすべき役割について具体的に記述する。
行政医師は、児童相談所設置までのロードマップで、自分の地域で何が問題となりそうか、具体的に指摘できる必要がある。そのためにやることは2点ある。1点は、虐待事例の件数や重大事例の経過など地域のトレンドを認識することである。もう1点は、現在ある虐待対応部門のレベル、人員、改善点など、こちら側の戦力を分析することである。
ほかに認識しておいた方がいいことも2つある。1つは、非協力的な医療機関との連携。2つ目は、児童相談所に医師がいる場合は、顔をつないでおく方がよい、ということである。
これらを駆使して、人権を無視した虐待対応にならないように、全体を俯瞰すること。これが行政医師の役割である。
【参考文献】
1)中核市・特別区に設置される児童相談所について 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/3-1.pdf
2)児童相談所設置に向けた支援策について 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/s2_3.pdf
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