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2020年11月24日火曜日

感染対策とは「場」ではなく「コンセプト」である

誤解されていることが大変多いのだが
「アベノミクス」が決して「経済用語」ではないように
「クラスター」とは「現象」を示している単語であって「対策」を示す単語ではない。

いまだに"クラスターの定義なんて無い"のだが
感染の形式は、リンクを追えばすべてがクラスターであって、孤発例はない。

定義があったとしても
「クラスター」も
「濃厚接触者」も
人間が恣意的に線を引いて定義せざるを得ないものである。
「検査対象者」も、当然、恣意的に決めて"落としどころ"を探るしかないものである。

濃厚接触者を調査して見えるようになった感染を「クラスター」と呼ぶのは構わないが、これはクラスターという「現象」を説明する単語である。
つまり「クラスター」という単語で現象を説明しても、「対策」は本来また別の話である。
人は現象を説明することは得意でも、対策を考えることは苦手だ(簡単ではない)し、ともすれば下手ウマな対策になる。それが証拠に、昨今は対策乱れ打ち状態になっている。下手な鉄砲、下手すぎて当たらず。
私には「クラスター対策」を言いたいがために「クラスター」という言葉を使っている、と思われてならない。

問題は、その対策が
第1波も、濃厚接触者調査に基づく検査と隔離
第2波も、濃厚接触者調査に基づく検査と隔離
第3波も、濃厚接触者調査に基づく検査と隔離
というように、"同じことの繰り返ししかできていないこと"にある。
いつまでも「クラスター潰し」を錦の御旗にしていることにある。

その昔「フェーズごとの対策が必要だ」って、誰か言ってなかったっけ?

現在の対策を医療現場に例えて言えば、
「救急外来で救急車が10台待っているのに、1人ひとりを昼間の外来よろしく診察している行為」に等しい。
「何やってんだテメー、さっさとトリアージしろ」
と上級医から蹴られそうな行為を、悠長にやっているのである(私は蹴らないけど)。

夜の街にも「接待を伴う飲食店」と連呼することの繰り返ししかできていない。
店にも、客にも、感染に配慮するか否かを啓発に頼ることになるわけだが
調査をすればするほど、夜の街を「狙い撃ち」しても無力だ、と、つくづく痛感する。
夜の店に啓発→客に啓発→客が行ったゴルフ場に啓発→利用客にも啓発→家族にも啓発→家族の会社に啓発→会社が取引する店に啓発→→→
・・・無限ループである。

断っておくが「店」を悪者にしたところで「客」の方が充分に悪い、という事例には事欠かない。その「客」も決して「若者が中心」ではない。「お金がないのに夜遊びしている」という客ではない。
そんな先入観で報道されては困る。

さまざまな曲者がいる。
そんな曲者には正直いって腹が立つが、曲者がいること自体は仕方がないと思っているし、そんな曲者がいることを前提に対策を考えるのが公衆衛生だとも思う。
みんな食べて行かなければならない、生きていかなければならないので。

感染がおこる「場」を基準に対策を考えれば済む感染症というものには、それなりの条件がある。「場」を基準にしてよい条件とは、ターンオーバーが長く、潜伏期間がある程度長くて一定で、無症状の人からは感染しにくいエトセトラ、である。

しかし、コロナは違う。

ターンオーバーが早すぎて(発症したと思ったらすでに多くの人に感染し終わっていて)
潜伏期間がバラバラで(1日の人もいれば14日以上の人もいて)
症状の有無もバラバラで(無症状の人もいれば、症状があっても自覚しにくい人、そこそこ咳が続く人、重症の人)
感染様式は何でもありで(空気感染もエアロゾルも飛沫も接触も)
ゆえにどんな防御策をもすり抜けるような感染症を(それが生活ってもんです。実験室じゃないんです。家庭で感染が拡がるなんて当たり前で仕方がないでしょーが)
1つの「場」で括って調査・注意しようとする発想にこそ、無理がある。

つまり、そもそも感染対策とは「場」ではなく「コンセプト」である。
「コンセプト」が先であり、「場」は後である。たまたま「場」でくくることが有効な感染症は「場」で考えるのであって、常に「場」で考えることが有効なわけではない。

検査や調査の感度・特異度は100%ではない。むしろ低い。
だってほら、「氷山の一角」だって理論疫学の先生方も言ってるやん?
陽性率を基準に持ちだすのは、検査の感度・特異度が100%だと仮定することに等しい。だから、検査や調査で見えてきたものだけをすべてだと思っていると、拾えたもの、見えたものだけで対策を考えてしまう。

だ・か・ら
わたくしは、
「濃厚接触者調査に基づく検査と隔離」という対策は
「検査や調査で見えてきたものだけを相手に」している対策だというのである。

いま必要な対策のコンセプトは「トリアージ」である。
フェーズはすでに、昼間の外来から夜の救外に移っている。
「場」を基準にした積極的疫学調査が通用するのは、昼間の外来を回している時、である。
「トリアージ」を基準にした消極的疫学調査に積極的に移行しなければ、救外は回せない。
いつかは蘇生を諦めなければ、救外は回せない。

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