common diseaseになった感染症の濃厚接触者を追いかけることは、もうずっと以前から実質的に不可能になっています。
市中感染は今に始まった話ではなく、3月上旬の時点ですでに市中感染でした。
だから「濃厚接触者の調査」というのは、もうずっと以前から「意味のない作業」になっています。
数字を固定した押谷モデル(クラスター潰し)が「正しい」ことを前提にし続けているからですが、実際にはモグラ叩きをしているだけです。もしコロナにおける濃厚接触者調査が本当に効果があるのならば、なぜいま第3波が来ているのでしょうか。保健所はずっと濃厚接触者調査をやってきましたけど、調査とは無関係に第1波~第3波と推移しています。
コロナにおけるクラスター潰しは、完全に後追いの作業です。濃厚接触者をあとから割り出しても、濃厚接触者の感染性を和らげることはできません。陽性者が分かり、濃厚接触者が分かった時点で、すでに感染はそれ以上に広がっているからです。また、いくら濃厚接触者に行動の自粛を呼び掛けても、1人1人の行動を完全に制限することは不可能だからです。検査は陰性証明にはなりません。
それでも「検査と隔離に依存し続ける」というのは、意味がないばかりか、弊害を生んでいます。「定量的に考えることが大事」と思っている人にこそ「濃厚接触者の調査」の実態を"定量的に"考えてほしいです。
さて
ある市町村で「80人の陽性者」が出たとします。
この濃厚接触者の調査を"定量的に"考えてみたいと思います。
保健所の職員が陽性者1人1人に電話をします。
陽性者1人につき、最低でも30分は電話をして、行動歴や家族構成を聞きだします。
そして濃厚接触者を割り出して"検査"を受けてもらうようにさらに電話します。
1人の陽性者につき、5人の濃厚接触者調査が出ると仮定して、1人あたり10分の電話で検査予約するとします。
保健所には調査専用の電話回線が10本もありませんが、10本あったとします。そして職員も10人確保できたとします。
「80人の陽性者」から、濃厚接触者の調査をするために、職員1人あたり、どれだけ時間がかかるでしょうか?
陽性者80人に30分間ずつ電話して、次に5人ずつの濃厚接触者に10分ずつ電話する、これを職員10人で対応する
(80人×30分+80人×5人×10分)÷10人=640分!=10.6時間です、ね。
仮に電話回線と職員を倍の20本20人にしたとしても、職員1人あたり320分、5.3時間かかります。
実際には、20本も20人も確保できませんが。
この数字の中には、入院調整とか、受診調整とか、医療機関からのワガママ電話への対応とか、トイレに行く時間とか、通常業務をする時間とか、ご飯食べる時間とか、報道発表の時間とか、市民からの苦情対応とか、政治家対応の時間とか、そういうものはすべて入ってません。
そうこうしているうちに、
今日も陽性者80人、電話対応20人がかりで5.3時間
明日も陽性者80人、電話対応20人がかりで5.3時間
明後日も・・・、電話対応20人がかりで5.3時間
できると思います?
実際には、職員1人が調査できる陽性者は1日2-3人が限度です。
それ以上になれば、聞きだす内容を削るか、調整に特化するか、検査案内のハードルを上げるか、というような「調査の縮小」に舵を切らざるをえません。
何度でも言いますが、common diseaseになった感染症の濃厚接触者を追いかけることは、もうずっと以前から実質的に不可能になっています。
陽性者との電話が30分で終わることはなく、実際には3時間かかることもあるし、数日間引きずることもあります。
「クラスター潰し」の適応は、たとえば、結核や、髄膜炎菌感染症には適応して良いと思います。ただし、それを水痘やインフルに適応させようとは誰も言いません。コロナも同じことです。
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