とある会社が、以下のようなシステムを開発したという。
「サーモグラフィ+Aiで入場者の顔を認証・識別し、どこに行ったか追跡できるシステムを開発した」
「発熱していることが分かる→行動を追跡→救急隊に通報する→迅速に検査につなげられます」
だって。
で、
「GWに駅で活用したことは記憶に新しいですが、どんな風に活用することが考えられますか?活用する上で注意するべきことは何ですか?」という能天気な文言と共に、意見を求められたので、書きました。
-----以下、意見-----
結論:こんな追跡システムは導入しないでください。
「法律にやってはいけないと書いてない。だからやっていい」なんて、通用しませんよ。大人の世界では。
1.個人情報保護法に抵触する可能性+人権侵害です。
Google mapのstreet viewですら、人の顔は個人が特定されないようになっています。法律に定められた検疫でもなく、同意もないのに、何の権限があって勝手に体温を測定し、個人を追跡できるのでしょうか。
駅でやられているのは、知事のスタンドプレーで、法律に基づいたものではありません。
「空港でやられていること」と「駅でやられていること」を同列に例として考えるのは、行政としては法的に危険な行為です。データの利用目的、事前表示、保存、活用、データ管理、漏えい防止措置etc、ハードルは高いです。また第三者に情報が渡る可能性もあります。
犯罪捜査に倣って使うのであれば、警察に依頼してください。
2.救急隊や行政に通知しても、出動しません。検査を受けさせる権限もありません。
カメラ上のデータを見て「発熱している人がいます」などという情報をもらっても、困ります。
発熱患者をそんなに引っかけてもらっても、その都度の対応なんて不可能です。
3.発熱者といっても、検査を受ける義務がありません。
カメラで発熱している人を捕まえても、受診するか否か、検査を受けるか否か、は、その人が決めます。
まず「受診」しなければ、「検査」ができません。かつ、受診の強制は不可能です。
また、「説得するための人員」もありませんし、そんな説得は無意味です。
「住所や電話番号を聞いて、健康監視を続ける」ような手間も、かけられません。
4.「入場拒否」や「別室に案内するスクリーニングに使う」だけならば、それぞれの施設の責任でおこなってください。
空港検疫や病院のように、発熱している人をピックアップして、施設ごとに対応を変えるためにサーモグラフィを設置するのならば、それは施設の責任で対応してください。
法的に入場拒否できるかどうか、は、慎重に考えていただいた方がいいと思います。
ここで「発熱している人を見つけた」と、いちいち救急隊や保健所に連絡されても困りますので、やめてください。
5.入場したあとで発熱した人は、引っかけられません。
サーモグラフィを通るところでは大丈夫だったけど「滞在中に発熱してくる」人は必ずいます。そんな人を引っかけるには、出口でスクリーニングするか、場内全域で検査するか、ですが、そんなコスパが悪いことはできません。
6.各施設は、こんなシステムに頼らない感染対策をしてください。
各施設は、個人を追跡して特定して受診させるこんなシステムに頼らないように、対策をすれば良いはずです。
一例を示します。熱があるか否かなんて、自己申告でも十分です。
・ある程度のすり抜けがあっても許容する(これも十分ありです)
・ある程度のすり抜けがあっても大丈夫なようにマスク等を推奨する
・ある程度のすり抜けがあったら困るので、距離がとれる対策をする(椅子を離す、入場者を減らすetc)
・いままでのやり方はできないし、かといって入場者を減らしたら経営が成り立たないから、廃業する or 新しいモデルに転換する。
以上!
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