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2020年4月23日木曜日

いくらデータを正しくwatchしても、正しい結論は導かれない

発信する元気がなくなりつつありますが
患者予測のシナリオや、確保したベッド数や、強化したPCR検査体制をいくら示されたところで、「机上の空論だ」と保健所関係者が言うのは、感染者数の見込みが高すぎると思っているとか、日医が言ってるようには医療崩壊は起こらないと思っているとか、そんなことでは決してありません。
逆です。
地域医療全体を保健所から見た現状と、各ステークホルダーがそれぞれの都合で訴える現状が、あまりに異なっているのです。そのため、誤解の上に、おかしな対策を提案されてしまいます。場合によってはそれが実行されてしまいます。そうやって「木を見て森を見ず」なので、「机上の空論だ」と言うのです。
例えばこういうダッシュボードのデータについて。https://www.stopcovid19.jp/
4月23日付けの愛知県は「入院329/ベッド数1600」で、「病床使用率20.5%」と出ています。
「おっ、まだベッドに余裕あるじゃないか。もっと検査して、どんどん入れたらいい。」
そう言われてしまいます。
これは「どの立場の人が言うのか」によって意味が異なるのですが、そんなことよりも、問題なことがあります。
保健所は「まだ余裕があるなんて、全然思っていない」ことです。
ダッシュボードの数字が悪いわけではないし、数字が正しいか間違っているかは、知りません。
そうではなくて「数字だけを見て、不足か、充足かは、何も言えない」ということを、知っていただきたいです。
そして、「まだ1200人は入院できる」と思ったら、大間違いなことを、知っていただきたいです。
たとえば・・・
保健所の電話回線と人のキャパ
検査までつなげるスタッフのキャパ
検査機械そのもののキャパ、検査技師のキャパ
ベッド数と実際に入院できる人数の差(部屋の作り、配置できるスタッフの余力etc)
入院した人を診るDrやNs、ICTのキャパ
重症患者が入るベッドには限りがある
実際ECMOなんて回せない、人工呼吸器も台数があれば使えるってもんじゃない
入院が重なり始めたら、あっという間にキャパオーバー
確保できるホテルにもキャパがある
出口戦略なしに、入り口だけさばいても、困るのはあとあとの重症患者の行き先です。
つい1か月前?、名古屋では、どこにも患者を入れられなくなりました。
県内での病床使用率が100%になっていないのに、です。
いくらデータを正しくwatchしても、正しい結論は導かれません。
医療資源には限界がありますが、その限界に到達するのは、一般に想定されている以外の事情のためだと思います。そして、その限界が来るタイミングは、「検査してもらえない」とか「受診拒否される」といったことではなく
「重症ベッドの病院が限界になったとき」です。

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