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2019年3月25日月曜日

愛知児童青年精神医学会第10回学術集会に参加したメモ

先日、「愛知児童青年精神医学会第10回学術集会」に参加しました。そのときのメモを掲載します。
いかに私たちが知らないことが多いことか、いかに多様性を理解することが難しいことか、いかに私たちの想像の範囲内が狭いことか、よーく気を付けなければいけないな、と思えました。とても良い勉強会でした。

----以下、メモ----
1.日本語習得は、年長児になってから来日するほど、困難になる。しかし、母語優先のためには、年長児になってからの来日がよい。年少者ほど日本語は覚えやすいが、言語による思考の発達が伴うかどうかは、年少者ほど危うい。
2.ADHDやLD、高機能自閉症という概念は、そもそも「その国に疾患概念がない」ことがある。概念がない場合は、親も当然問題にしない。いくら日本の病院等で異常を指摘しても理解されないのは、「異常」や「問題」とする概念自体が異なる場合があるから。 
by三好純太(葛西ことばのテーブル)

3.ある社会で外国人として育つ場合、周囲よりも自分はできなくてあたり前(あきらめ)、周囲と自分は異なっていて当たり前(変と言われることに慣れる)、になってしまう。良い意味ではなく、悪い意味として、「分からない」を素直に受け入れざるを得ないため、「できた、分かった」という経験が乏しくなる。
4.「サードカルチャーキッズ」を分かってほしい。たとえば、ブラジル国籍の父母を持ち、日本で生まれた子どもは、ブラジルでもなく、日本でもない文化(サードカルチャー)を持ち、そこに困難さが生まれる。日本にいると「外国籍の子ども」として扱われるが、ブラジルに帰っても「外国で育った子ども」として扱われる。A+B=C。A国の父母を持ち、B国で生まれ、AでもBでもないCの文化を持つ、ということ。
5.ブラジルにある小学校からの留年制度は、それだけおおらかに育てる、との見方もあるが、一方で、丸暗記して必死に留年しないようにするため、すべてのエネルギーを留年しないことに注ぎ込んでしまう。決して「おおらか」だけではなく、弊害もある。
6.ニューカマーと、日本生まれ外国籍の課題の違い
・ニューカマー:1980年代以降の新規来日者。来日したときの学年相当の勉強は、本国で終えてきたハズだが、できていないことが多い。しかし、できていないのを放置していても、日本では学年が上がっていってしまう。段階を踏んだ支援が必要なグループ。
・日本生まれ外国籍:ダブルリミテッド(頭打ち)が課題で、2か国語以上話すことができるが、どちらも満足には使いこなせない状態。その結果、学力もついていかなくなる。言語発達が頭打ちになる原因は、言語習得の問題か、発達の問題か、家庭環境の問題か、すべて複雑に絡んでいる。ゆえに能力を上げていくことは大変なグループ。
7.言語発達支援では、まずは児の日本語力がどの段階にあるのか評価する必要がある。そのツールの1つがDLA (dialogic language assessment)で、平成26年に文科省が出した。まだ不十分さはあるが、いまある評価手段としては有効である。
by亀山砂江子(東三河教育事務所)

----以下、プログラム----
愛知児童青年精神医学会第10回学術集会
1.日時  平成31年3月17日(日)  
2.会場 豊橋商工会議所 3Fホール 
3.会長 平田清二(豊橋市こども発達センター 前センター長)
4.大会テーマ
「外国籍の発達障がい児の支援をめぐって ~何が変わり、何が残されているか~」
5.参加費 会員 1,000円
      非会員 3,000円
      シンポジウムのみ参加 1,500円
プログラム
午前: 一般演題  
午後: シンポジウム 「外国籍の発達障がい児の支援をめぐって~何が変わり、何が残されているか~」

話題提供
『外国とつながるこどもへの言語指導
  ~STとしての立場から~』
   言語・学習指導室葛西ことばのテーブル
               言語聴覚士 三好純太
『バイリンガル環境で育つということ~現在、目の前のこどもたちと、いまの私と~』
   東三河教育事務所 外国人児童生徒語学相談員
                     亀山砂江子
『外国籍のこどもたちへの支援と今後の課題
  ~実践を通して気づき、感じ、考えたこと~』
          株式会社 クラ・ゼミ 青島佐希子
                     倉橋徒夢
『外国籍の発達障がい児の外来診療を通じて』
   豊橋市こども発達センター 児童精神科 中野弘克

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