このブログを検索

2022年6月23日木曜日

行政検査を依頼するときは「〇〇を疑うから●●の検査をしたい」と言ってほしい

検疫所ができる検査はすべて陰性だったけど「状態が悪い」ってことで、感染症法に切り替えて対応することになった症例。

病院からは「できる検査は全部やって」と言われたので「そんな行政検査オーダーはない」と言って断った。

そしたら
「1類感染症"かも"しれないから、できるウイルスの検査は全部やってほしい(はい?)」
「臨床家は、1つ1つ可能性を全部潰していって、最後に残ったものが診断なんだ(・・・)」
「これで感染症を見つけられなかったら保健所の恥だ」

そこまで言われたけれど、まったく同意できない。そもそも「何を疑うのか」が「まったくない」のは、どういうことだ。何も疑っていないのか?

「保健所は何を疑うのか?」っていきなり言われたけど、いや待て、こっちはまだ性別すら聞いてないわ。そもそも患者を診てるのでしょう、目の前で。少しは感染症の勉強したらどやねん。

鑑別診断しないで網羅的に検査オーダーだけしても「偽陽性も偽陰性も考えず、検査結果をすべて鵜呑みにします」と言っているのだから、そんなものは診断ではない。

網羅的な感染症検索には限界がある。感染症法に規定されていない病原体なんてゴロゴロある。世の中にある検査すべてをやれ、とでも言うのだろうか。だったら検査の機械だけあれば済む、医者は不要だ。来院する患者全員に、病院の玄関で全身造影CTやMRIもやればいい。

行政検査を依頼するときは、きちんと「〇〇を疑うから●●の検査をしたい」と言ってほしい。"疑う"のが先で、"検査"はその次。スクリーニングするにしても「何の」スクリーニングをするのか、対象疾患が必ず存在する。
地衛研も、感染研も、すべての検体にすべての検査を網羅的にやっているワケじゃない。
そんな魔法の道具は存在しない。

「感染症を見つけられない保健所の恥」ではなく
「鑑別疾患を挙げることができない医者の恥」だと思っている。

0 件のコメント: