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2017年1月24日火曜日

中学生のピロリ菌検査は医学的・政策的に妥当か:その2:【ピロリ菌スクリーニングの陽性率・感染率・感度・特異度などの計算】

 【ピロリ菌スクリーニングの陽性率・感染率・感度・特異度などの計算】
豊橋市 平成28101日時点で、13歳の人口は3791人。この人数で試算する。

【感染率が5.4%の場合を検証】
いま中学生3791人おり、感染率5.4%と仮定すると、208人がピロリ菌感染者である(小数点第一位四捨五入)
一次スクリーニングに「尿抗ピロリ抗体」、二次スクリーニングに「尿素呼気試験」を採用したと仮定する。

<一次スクリーニング:尿抗ピロリ抗体>
尿抗ピロリ抗体の感度、特異度として、現在コンセンサスがあるのは下記12である。簡便のため1のみ検証する。

尿抗ピロリ抗体
感度
特異度
コメント
1
Aliment Pharmacol Ther 2003
82.4%
83.3%
感度が低く、一般的でない。
2
Gastroenterology & hepatology 2014
85%
79%
感度が低く、ピロリ菌除菌の結果を確かめる指標としては不向き。

A:1の感度・特異度の場合(小数点第一位四捨五入)

疾患

検査陽性
171
598
陽性合計:769人→陽性率20%
検査陰性
37
2985
陰性合計:3022

合計208
合計3583
検査合計:3791
陽性的中率=22%、陰性的中率=98(陰性的中率が高いのは、そもそも感染率が低いから)

<二次スクリーニング:尿素呼気試験>
尿素呼気試験の感度・特異度として、現在コンセンサスがあるのは下記12である。

尿素呼気試験(UBT)
感度
特異度
コメント
1
Aliment Pharmacol Ther 2001
95.4%
94.9%

2
Gastroenterology & hepatology 2014
>95%
>95%
3歳以下には不適。直近の抗菌薬やPPTにより偽陰性となる。

B:呼気検査をAの検査陽性者769人に施行した場合(感度・特異度とも95%と仮定する)

疾患

検査陽性
162
30
陽性合計:192
検査陰性
9
568
陰性合計:577

合計171
合計598
検査合計:769
陽性的中率=84.3%、陰性的中率=98.4%

<AとBの合計>
感染率5.4%なら、いま中学生3791人中、208人のピロリ菌感染者がいると計算できる。

治療する
治療しない

真の陽性
162
46
感染者合計208
偽陽性
30



治療者合計192


感染者のうち治療に至る率:78%
感染者のうち治療に至らない率:22%
治療者のうち、不必要な治療率:16%


【感染率が1%の場合を検証】
いま中学生3791人いるとすると、感染率1%ならば、38人がピロリ菌感染者である(小数点第一位四捨五入)

<一次スクリーニング:尿抗ピロリ抗体>
尿抗ピロリ抗体の感度、特異度として、現在コンセンサスがあるのは下記12である。簡便のため1のみ検証する。

尿抗ピロリ抗体
感度
特異度
コメント
1
Aliment Pharmacol Ther 2003
82.4%
83.3%
感度が低く、一般的でない。
2
Gastroenterology & hepatology 2014
85%
79%
感度が低く、ピロリ菌根絶を確かめる指標としては不向き。

A:1の感度・特異度の場合(小数点第一位四捨五入)

疾患

検査陽性
31
627
陽性合計:658人→陽性率17.3%
検査陰性
7
3126
陰性合計:3133

合計38
合計3753
検査合計:3791
陽性的中率=4.7%、陰性的中率=99(陰性的中率が高いのは、そもそも感染率が低いから)

<二次スクリーニング:尿素呼気試験>
尿素呼気試験の感度・特異度として、現在コンセンサスがあるのは下記12である。

尿素呼気試験(UBT)
感度
特異度
コメント
1
Aliment Pharmacol Ther 2001
95.4%
94.9%

2
Gastroenterology & hepatology 2014
>95%
>95%
3歳以下には不適。直近の抗菌薬やPPTにより偽陰性となる。

B:呼気検査をAの検査陽性者658人に施行した場合(感度・特異度とも95%と仮定する)

疾患

検査陽性
29
31
陽性合計:60
検査陰性
2
596
陰性合計:598

合計31
合計627
検査合計:658
陽性的中率=47.5%、陰性的中率=99%

<AとBの合計>
感染率1%なら、いま中学生3791人中、38人のピロリ菌感染者がいると計算できる。

治療する
治療しない

真の陽性
29
9
感染者合計38
偽陽性
31



治療者合計61


感染者のうち治療に至る率:76%
感染者のうち治療に至らない率:23%
治療者のうち、不必要な治療率:52%


【感染率が0%の場合を検証】
いま中学生3791人いるとすると、感染率0%ならば、0人がピロリ菌感染者である(小数点第一位四捨五入)

<一次スクリーニング:尿抗ピロリ抗体>
尿抗ピロリ抗体の感度、特異度として、現在コンセンサスがあるのは下記12である。

尿抗ピロリ抗体
感度
特異度
コメント
1
Aliment Pharmacol Ther 2003
82.4%
83.3%
感度が低く、一般的でない。
2
Gastroenterology & hepatology 2014
85%
79%
感度が低く、ピロリ菌根絶を確かめる指標としては不向き。

A:1の感度・特異度の場合(小数点第一位四捨五入)

疾患

検査陽性
0
633
陽性合計:633人→16.6%
検査陰性
0
3158
陰性合計:3158

合計0
合計3791
検査合計:3791
陽性的中率=0%、陰性的中率=100(陰性的中率が高いのは、そもそも感染率が低いから)

<二次スクリーニング:尿素呼気試験>
尿素呼気試験の感度・特異度として、現在コンセンサスがあるのは下記12である。

尿素呼気試験(UBT)
感度
特異度
コメント
1
Aliment Pharmacol Ther 2001
95.4%
94.9%

2
Gastroenterology & hepatology 2014
>95%
>95%
3歳以下には不適。直近の抗菌薬やPPTにより偽陰性となる。

B:呼気検査をAの検査陽性者633人に施行した場合(感度・特異度とも95%と仮定する)

疾患

検査陽性
0
32
陽性合計:32
検査陰性
0
601
陰性合計:601

合計0
合計633
検査合計:633
陽性的中率=0%、陰性的中率=100%

<AとBの合計>
感染率0%なら、いま中学生3791人中、0人のピロリ菌感染者がいると計算できる。

治療する
治療しない

真の陽性
0
0
感染者合計0
偽陽性
32



治療者合計32


感染者のうち治療に至る率:--%
感染者のうち治療に至らない率:--%
治療者のうち、不必要な治療率:100%


【結論】中学生3791人に、既存のコンセンサス通りの尿抗ピロリ抗体検査と尿素呼気試験を実施した場合。
感染率10%、および感染率3%の場合の結果も比較のため追加して記載した。いま中学生3791人おり、一次スクリーニングに「尿抗ピロリ抗体」、二次スクリーニングに「尿素呼気試験」を採用したと仮定する(小数点第一位以下四捨五入)。

感染率
10
5.4
3
1
0
罹患者数
379
205
114
38
0
<一次スクリーニング:尿抗ピロリ抗体検査のまとめ>
感度 / 特異度
82.4%/83.3%
尿抗ピロリ抗体の陽性率
23.2
20
18.6
17.3
16.6
<二次スクリーニング:尿素呼気試験のまとめ>
感度 / 特異度
95/95
陽性的中率
91.3
84.3
74
47.5
--
感染者が治療に至る:78
296
162
89
29
--
感染者が治療に至らない:22
83
46
25
9
--
治療者のうち不要な治療
8.6(28)
16(30)
26(31)
52(32)
100(32)

1.人口や感染率にかかわらず、この一次、二次スクリーニングの感度・特異度の場合、感染者のうち治療に至るのは78%、治療に至らないのは22%である。
2.尿抗ピロリ抗体検査の結果が陽性率16.6%を下回る場合、感染率0%となりうるため、ほぼ偽陽性であることを否定できない。
3.感染率1%の場合、スクリーニング陽性者のうち、真の陽性者はおおむね2人に1人である。
4.感染率0%であっても、偽陽性となって治療が必要と判断される人が32人発生する(人口比0.84%=この比率は人口規模に関わらず一定である)
5.これらの結論は、検査の種類が異なっても、検査の種類では決まらず、感度・特異度で決まる。

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